魔法バトルスタート!ちわたが削岩機を起動!……ガガガガガッ!!耳をつんざく。気づいたときには、もう彼の姿は消えていた。
地中を掘り進めながら高速移動、土と岩が弾け飛び、地面が唸りを上げる。
「え……?」と思った瞬間、背後でドカンと爆ぜる音!
振り返った先にいたのは、削岩機を振りかぶり、僕の顔めがけて突っ込んでくるちわた。とっさにバリアを展開する。だけど……ッ!
バキィン……ッ、誇りの防御魔法は、一撃で粉々に砕け、刃のようなドリルが突き破ってきた。
慌てて大きく跳ねのき、間一髪かわすも……足元がぐらりと沈んだ。
にいすい「なっ……!?落とし穴!?」
視界がぐるりと反転し、僕の体はそのまま地中へ……掘り抜かれたばかりの地下通路に、ずしんと落下する。
ドガァンッ!!待ち構えていたちわたの攻撃。
削岩機がうなり、僕の体は壁に叩きつけられた。
衝撃で視界が白く弾け、握っていた金棒が宙を舞う。
にいすい「……っ、ぐ……!」
肺から空気が押し出され、息ができない。岩壁の鋭い破片が腕や脚に突き刺さり、痛みが全身を走った。
ちわたが、ドリルを高々と掲げ、容赦なく僕の顔めがけて振り下ろしてくる!
……終わり?
いや、違う。
にいすい「ま、負けない!!」
転がっていた金棒に魔法を飛ばす。遠距離操作で動き出した金棒に、一瞬ちわたの動きが止まる。
その隙を逃さない!
僕は一気に魔法を解き放ち、地下通路を水で満たした。大波が渦を巻き、ちわたの体を呑み込み、噴水のように地上へと吹き上げる。
空中へ放り出され、バランスを崩す。
僕も水流を利用して飛び出し、一直線に加速する。
拳にパワー増幅魔法を込め、ぎゅっと握りしめ、振りかぶった。
ちわた「そんなの、当たらないよ!」
ちわたは削岩機で防ごうとする……。でも、僕の拳はオトリだ♪
背後から、遠隔操作の金棒が飛んできて、ゴンッ!と後頭部に直撃し、ちわたは気を失って吹っ飛んだ。
観戦していたミニキスたちのベンチに突っ込み、土埃が舞い上がる。
巻き込まれたミニキスたちも、不意打ちで派手に吹っ飛んでしまった。
にいすい「勝った……!い、いや、それよりみんな、大丈夫!?」
駆け寄ると、ちわたは大の字で寝転がっていた。一瞬気を失っていたようだけど、すぐにじたばたと悔しがりはじめる、……元気そうで安心した。
ミニキスたちもすぐ戻ってきて、ちわたに回復魔法をかけた。
タコパチ「ちわたの負け~!」
ちわた「こんな負け方、悔しすぎる……!落とし穴で絶対勝ったと思ったのに!金棒のこと完全に忘れてた……!」
ミニキス「多分、金棒のこと覚えてても負けてたと思うで。な?にいすい。」
にいすい「え?う、うん。金棒が効かなかった時のために、飛び散った土と岩を槍に変形させて隠してたんだ。……攻撃の準備は、してあったよ。」
ちわた「オレ、ぼろ負けじゃん……!でも楽しかった~!次は絶対、負けないからな!」
そう言い残すと、ちわたは歩き出した。ポケットからスマホを取り出し、電話をしながら帰っていった。
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レッドデビル☆カンパニー・本社
バトル専用広場 出口付近・ちわた視点
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駆け足でタコパチさんたちと距離をとり、オレ(ちわた)は電話に集中する。
ちわた「……はやく出ろ~!」
相手は親友、ショコラティエのほめと。国際的な表彰式に出席するため、タクシーで現地に向かっている頃だ。オレも親友たちも仕事を早く切り上げ、会場に応援に行く予定だった。タキシードも用意して、みんなでいつものメイド喫茶で楽しく準備していたのに…… ……ようやく繋がる。
ほめと「もしもし?ちわた?どうしたの?もしかして緊張しちゃってる~?」
ちわた「表彰式は中止、ちゅうし~!!カチョロもいる?モジさんやコック早乙女さんたちも、もう会場に向かってるかな?今すぐ仲間全員に連絡して、オレの家の庭に集合!まちるちゃんに荷物まとめてもらうから、宇宙船に乗って避難するよ!!」
ほめと「え、なんで!?表彰式はどうするの!?」
ちわた「多分、どうせ、中止になる!にいすいっていう強すぎるイケメンが、レッドデビル☆カンパニーに来てるんだ!オレ、バトル広場でボロ負けした……。このあとブレイブ☆タコキスと戦うと思う。表彰式の会場、結構近いし……大規模なバトルに巻き込まれる可能性が高い。だから全員で避難だ!表彰式なんて毎年やってるんだし……また金メダルとればいいだろ!」
ほめと「ちわたが負けた!?あんなに強いのに!?……はぁ、仕方ないな~!わかった、皆に連絡してそっち行くよ!運転手さん!行き先変更でお願いします!」
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レッドデビル☆カンパニー・本社
バトル専用広場 にいすい視点
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ミニキス、タコパチと並んでベンチに腰を下ろす。ミニキスの肩の上では、フィカキスがのんびりとスポーツドリンクを飲んでいた。
ミニキス「勝ったん、すごいやん。で、どうやった?怖かったんとちゃう?」
にいすい「……ちょっと怖かったよ。でも、楽しかった。青い星じゃ、こんな風にバトルできないから。マリリンたちには真似してほしくないし、学校関係者に見つかったら大変だし。異世界に行っても……からすさん(青色の不死の星の化身/星の管理人)たちは、魔法は見てくれるけど、本気で攻撃してはくれないんだ。」
タコパチ「皆、優しいからね。からすたちは普段はのんびりしてるし、鍛錬するタイプじゃないし。練習しなくても強いし?それに、にいすいの雰囲気が柔らかいから……本気で攻撃するの、ちょっと申し訳なくなるのかも。だから僕、バトルの前にちわたにテレパシーで伝えたんだよ。
見た目に惑わされず、気を使わず、顔面狙うんだよって!」
にいすい「……そうなの!?」
タコパチ「でも、戦い方を見て分かった。にいすいは優しくて真面目だけど、バトル好きだし、挑戦的で負けず嫌いなタイプだよね♪気を使うなんて、ぜったい失礼だって、確信した♪
座敷童の仕事だけじゃなく、座敷童を育てて、校長までしてる。からすたちと話して、座敷童が現世の管理を引き受けることになったのも、にいすいさんの働きかけがきっかけなんでしょ?そんな風に聞いたことあるよ。
現世と異世界、動きまわって、関わって、いろんな仕事を背負うのは、挑戦するのが好きだから。
自分の限界を決めたくないから!
……そうでしょ?」
にいすい「そうかも。……僕にも案外、情熱的な一面があるのかもしれないね。」
ミニキス「からすさんたちの仕事と、星を守る使命……あれな、ちょっとずつ奪ったったらええねん。星のすべてを守りつづけなあかんって、宇宙規模で重すぎる責任やろ?それを分け合って、少しでも軽くしたったらええねん。
オレらはめちゃくちゃ強いけど……心に余裕ないときもある。ほんまは、もっと気楽に、もっと遊びたいって思うときもあるから♪
にいすい、遠慮してたらもったいないで。皆ができへんことをやって、皆で力合わせて、道を切りひらいていこうや♪」
自分のことは、まだまだだと思ってる。
きっと千年先になっても、そう思ってるだろう。
……でも、認めてもらえた気がして、なんだか嬉しかった。
ミニキス「それで、どうする?オレとタコパチともバトルしてみるか?」
フィカキス「……それはあかん!宇宙で花火ドカーンした時の威力の差、忘れたん?にいすいの花火も確かにすごかったけど、ブレイブ☆タコキスの魔法陣花火は圧倒的やったやん。さっきの戦い見てても……正直、にいすいが良い勝負できるとは思えへん。一方的なバトルは、危ないって。」
フィカキスの言いたいことはわかる。
今の僕じゃ、彼らには到底勝てない。
滅んだ星をまるごと復活させる回復魔法も、一撃で星を燃やし尽くす攻撃魔法も……どれもブレイブ☆タコキスの技なんだ。宇宙一の魔法使い。僕とはレベルが違い過ぎる。
それでも。自分の限界を決めたくない。
だから、答えは決まってる。
僕はフィカキスの頭をポンとなで、ゆっくりと立ち上がった。
にいすい「もちろんやるよ。ルールは……無し!気を失うか、骨を二百六本砕かれたら強制終了!しぬのは禁止♪」
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ベンチでは、フィカキスが不安そうにこちらを見つめていた。
その横で、ミニキスとタコパチが静かに手を取り合う。
次の瞬間、ふたりの瞳が同じ色に輝いた。
. . • ☆ . ° .• °:. *₊ ° . ☆
ミニキス「変身!」
タコパチ「ブレイブ☆タコキス!!」
. . • ☆ . ° .• °:. *₊ ° . ☆
まばゆい光が広がり、ふたつの体がひとつに融合する。
ポップで可愛らしい、きらびやかな衣装。けれど、その奥に潜むのは圧倒的な力。
最強の魔法戦士 ブレイブ☆タコキスが、目の前に現れた。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「本気で来てや♪」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「さあ、先制攻撃してみなよ♪」
にいすい「……よーし、やってみよう!」
金棒を両手で構え、掌から魔力を注ぎ込む。じりじりと鉄が熱くなり、やがて真紅の炎をまとって燃え上がった。
僕は地面を強く蹴り、瞬きする間もなくブレイブ☆タコキスの目前へ迫る。
全力で振り下ろす一撃!!!
でも、ブレイブ☆タコキスは一歩も動かない。片手をすっと差し出し、僕の拳を受け止めた。
ガキィンッ!!火花が散り、全身に衝撃が走る。金棒は一センチたりとも押し込めない。
彼のつま先で軽くはじかれ、僕の体は簡単に弾き飛ばされた。
地面に叩きつけられてしまう。
……力勝負じゃ、かなわない。そう思い知らされる。
それでも……!
僕は歯を食いしばり、再び水を操る!!大量の水を呼び上げ、ブレイブ☆タコキスを取り囲む。同時に、地面と空中に特大の光の魔法陣を展開する。
にいすい「……どうだッ!!」
水と光が重なり合い、無数の槍となって一斉に降り注ぐ。隙が出来たら、接近し、金棒で攻撃を仕掛けよう……!
……ブレイブ☆タコキスはコツン、と靴先で地面を蹴った。
その瞬間、赤と白の煌めきが水を呑み込み、光の槍までもろともに霧散(むさん)させてしまった。
僕はその光景に、背筋を震わせた……圧倒的だ……これが、伝説の力。
ブレイブ☆タコキスは、どこか退屈そうな顔をしていた。
でも……
一歩も動かないなんて、正直ちょっとムカつく……。僕のむっとした表情に気づいたのか、ブレイブ☆タコキスも同じようにむっとした。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「本気出してないんは、君の方やで、にいすい。」
にいすい「……いや、僕は……」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「気が付いてないと思った?」
そう言って、ブレイブ☆タコキスは空を指さした。
……すぐに理解した。あれは、このバトル広場を包む強力な防御・魔法結界。
ここに来た時、指先でふれてピリッとした感覚を覚えた。
ただ確かめたかったんだ。どんな魔法で構築されているのか。
……いや、違う。確かめるだけじゃない。
それを自分のものにしたかったから……僕は、手を伸ばしたんだ。
この魔法結界、利用できるかも?よし、……やってみよう。
目を閉じ、頭の中で何度も、魔法結界の魔法式をなぞり、正確さを確かめる。
感情が高ぶる、心の奥で燃え盛る闘争心が、火柱のように立ち昇っていく。
そして、カッと目を開いて、全身に魔力を込める。
手のひらを床に叩きつけた。
広場全体が、白く眩い光に包まれる。
僕の魔力と、広場を覆う魔法結界の魔力が結びつく。
結界を利用することに成功した……!!
結界を分解。防御の魔法を、攻撃魔力に全変換。
さらに圧縮。僕の体内で何度も圧縮。
魔力を、チャージ!チャージ!チャージ!!
全エネルギー 解放ッ!!
にいすい「くらえぇぇ!!!にいすい☆スパーク!!!」
放たれた光の急流。ブレイブ☆タコキスはステッキで正面から受け止める。
特大のビームが一直線に押し寄せ、ステッキの先端から火花が散り、広場を震わせた。
その背後!僕は金棒を振りかぶり、全力で叩き込む。
瞬時に残りのビームをはじき切ったブレイブ☆タコキスが振り向き、ステッキで金棒を受け止める。
バキィッ!!ぶつかって、武器が折れた音。
折れたのは、僕の武器ではなかった。
……ブレイブ☆タコキスのステッキだった。
驚き、目を見開く彼。
ブレイブ☆タコキス「ま、まさか……!」
僕はにやりと笑った。
あの金棒には、魔法結界をまとわせていたんだ!自分のものにして、自分で発動してみせたんだ。
この結界は、イカパチがレッドデビル☆カンパニーのビルを守るために設計されたもの。つまり、社員のタコパチ、ブレイブ☆タコキスの能力は想定内なんだ。簡単には防ぎきれないはず!
振り下ろした一撃は、バリアを貫通し、ブレイブ☆タコキスの体を弾き飛ばした。
衝撃で吹き飛んだ体が地面に激突し、そのまま勢いが弱まることなく、大地を削り裂く。
土砂が飛び散り、ブレイブ☆タコキスは地下深くへと叩き落とされていった。
数秒後。
グラウンド全体が轟音を立てて揺れた。
ひび割れが走り、地面がせり上がり、いくつもの崖が生まれる。
驚いたフィカキスは「ぴょーん!」と飛び上がって避難した。
そして地割れの奥底から、ブレイブ☆タコキスが飛び出してきた。
瞳は真紅に燃えている。
……僕と同じ色の闘争心が、そこに宿っていた。

