過去は変えられない。それでも、“今”は何度でも選び直せる。

荒花ぬぬ作品のキャラクターたちが作品の垣根を越えて登場する、クロスオーバー・ダークファンタジーです。
本作から初めて知るキャラクターがいても、物語を追いながら関係性や過去を知っていける構成となっています。過去の小説・ゲームを知っている方は、それぞれの物語の「その後」としてもお楽しみいただけます。
あらすじ
宇宙のあちこちで、それぞれの人生を歩んできた人々。
大切な人を失った者。故郷を失った者。取り返しのつかない罪を犯した者。
誰かを愛するあまり、間違えてしまった者。
そんな彼らの物語が、ひとつの「デスゲーム」をきっかけに交わり始める。
兄への複雑な感情を抱えるデスゲーム主催者・マシロ。
彼を愛し、そばにいるクロサキ。
そして、かつて敵同士だった者、長い時を生きてきた者、平穏な日常を送っていた者たちまで……それぞれの大切なものを守るため、いくつもの星と物語を越えて集まっていく。
失ったものは、なかったことにはできない。
傷つけた過去も、悲しみも、後悔も消えない。
それでも、今ここにいる誰かのためにできることがある。
魔法、戦う力、知識、優しさ。
そして、ときには誰かに「助けて」と伝えること。
たったひとりでは救えない宇宙を、
不器用な人々が、それぞれの力を持ち寄って守ろうとする物語。
全18話・完結済
読み始める前に/コンテンツガイド
本作は、コミカルな日常・恋愛・友情などを描く一方で、ダークファンタジーとして残酷・倫理的に問題のある人物や出来事も扱います。
物語の中には、以下のような表現が含まれます。
・殺人、デスゲーム、死や大量死を扱う描写
・流血、負傷、身体損傷などの暴力・残酷表現
・監禁、拘束、誘拐、薬物を用いた行為
・脅迫、騙し合い、心理的な支配や操作
・故郷や大切な人との死別、戦争・星の滅亡に関する描写
・記憶や人格への干渉・改変に関する描写
・強い依存、執着、独占欲を含む恋愛関係
・相手の意思や境界を尊重しない言動、同意が不安定な状態での親密な接触
・自罰的な思考、自己犠牲、自身の命を危険にさらす行為
・加害者と被害者、罪や赦しをめぐるテーマ
登場人物の中には、他者を傷つけたり、倫理的に問題のある価値観や行動を選んだりする人物も登場します。
また、誰かを愛していることや、本人なりの事情・苦しみがあることが、その行為の正しさを意味するものとしては描かれていません。
一方で本作は、過去や傷をすべて消して「元通り」にすることではなく、それぞれが抱えているものと向き合いながら、誰かに頼ること、話し合うこと、そして今を生きていくことを描いた物語です。
上記の内容が苦手な方は、ご自身のペースや体調にあわせて、無理のない範囲でお楽しみください。

オープニングテーマ・関連作品紹介

本文
― ― ― ―
青色の不死の星。
― ― ― ―
魔力が尽きるまで戦うのは、やっぱり怖かった。
強大な魔法、存在感。鋭い眼光。
そして「……でも、その程度か。」という言葉が、何度も胸の中で反響する。
ざわめく心と呼吸を落ち着かせるように、カチョロは眠るほめとを強く抱きしめていた。
怖い思いをさせてしまった。
カチョロの瞳から、ずっと我慢していた涙が、そっとこぼれ始めた。
ほめとが「ん?」と、小さく声をもらして目を覚まし、混乱した様子で、あわてて立ち上がる。
ほめと「か、カチョロ!!??えっと、大変なんだ、宇宙船にさやらんっていう変な奴が襲ってきて~!!」
ことおが「大丈夫、大丈夫♪」と、すかさず、空中に新しいモニターを浮かび上がらせ、通信を始める。
映し出されたのは、宇宙船内……ちわたたちの姿だった。
ちわた「ほめともカチョロも、無事でよかった~!!オレたちも無事!!」
コック早乙女「ご心配なさらず♪」
ちわた、まちる、モジ、ピピヨン、ちえる店長、コック早乙女、たんぽぽ、ふうが、ささめき、むむ、さくま、とおこたち……大切な仲間、頼もしい救世主。その姿や声が次々と確認でき、ほめとは、心の底からほっとした。
ほめとは、涙を流すカチョロのマントの中にもぐりこみ、ぎゅっと体を抱きしめた。
ほめと「カチョロ、ありがとう。暗いところに閉じ込められて怖かったけど、痛いこととか、何もされてないし、怪我もしてないよ。
……カチョロが助けてくれるって、信じてたから。だから平気だった。」
声も、ぬくもりも、確かにここにある。
小さな命の灯火のあたたかさが、胸の奥まで届いてくる。
カチョロは、ふるえるように息をついた。
無事なんだ。
何も失っていない。
生きて、そばにいてくれる。
それだけで、もう……十分。
カチョロ「ありがとう、ほめと君。大好き。大好き。」
ほめと「オレも。大好き。」
カチョロはほめとを抱きしめかえした。
カチョロは、ほめとの四葉のクローバー型のブローチを取り出した。そこには、ほめとの魔力と、からすから受け取った深海の力が宿っている。
カチョロはその力で、自分の魔力を回復させたあと、そっとブローチをほめとの胸元に戻す……。
ほめと「これ、役にたった?」
カチョロ「もちろん。心の支えだった。ほめと君の魔力は、もったいなくて使えなかった。だからこそ、自分の力で頑張ろうって、思えた。」
ほめとがブローチにそっと触れた……深海の力がはじけて、違和感に気が付く。
ほめと「なんか、パワーアップしてる気がするんだけど!?」
カチョロは、何でもないような顔でほほえんだ。
カチョロ「そうかな?気にしないで。」
からすは、ミニキス、タコパチ、フィカキス、そしてユニタスに声をかけていた。しかし、みんなまだむにゃむにゃしていて、目覚める様子はない。
からす「だめだ、目覚めない。難しい魔法で眠らされているんだ……。しかし、超新聖爆発の光は止まっている。今すぐ宇宙が崩壊する心配はない……はずだ。
今は、時空のトンネルにいるさくら君たちの方が心配だ。ことお君、ミニキス君たちの睡眠魔法を解く魔法、解読できるか?わたしは、さくら君を助ける。
仲間は取り戻せた。あとは、ブレイブ☆タコキスと深海の力を信じることにする……タコタコタコ星、滅びた星、そして宇宙を修復、回復してもらおう。
さくら君たちが、宇宙の深層を目指す理由は、もうないはずだ。早く状況を伝えて、助け出さないと。」
からすは、空中に光の糸を出現させた。その糸で、自分のマウスと、ことおのコンピューターをつなぐ……すると、からすの魔法モニターに、ことおのコンピューターと同じ画面が映し出された。さくらたちの居場所を検索している様子が表示されている。
進行状況は、80%……85%……
あと少しで、見つかりそうだ。
ことおは、もう一台のコンピューターを操作し、ミニキスたちを眠らせている魔法を解く方法を調べはじめた。
宇宙船内のちわた達を映すモニター、さくらたちの居場所を検索しているモニター、ミニキスたちを眠らせている魔法を解く方法を調べるモニター……三台のモニターが、それぞれ光っている。
ことお「まかせてよ♪……カチョロ。さやらんは、本物じゃないって言ってたけど、どういうこと?さやらんについて、何か気づいたことがあるんだろ?共有してもらってもいい?」
カチョロは、目を合わせようとしなかった。どこか、言いたくなさそうな様子だった。しかし、黙っているわけにもいかない。
カチョロは、意を決して口を開いた。
カチョロ「落ち着いて聞いてね。……本物のさやらんは、どこかに閉じ込められているのか、身動きが取れない状況なのだと思うよ。あの子はいつも強くて、秘密が多くて、そして、真面目だとは言えないような雰囲気を身にまとっていたから……、利用されてしまったのだと思う。
あの底なしの魔力。宇宙を超えて届く遠距離魔法……そんなもの、
ありえない。
……僕たちの前に現れたさやらんの正体は、セカイ(全宇宙)を司る魔法使い。
コメット。
間違いないよ。
僕が戦ったのは……完全な状態の深海の力。
アルコンスィエルさんや、からす君が持つ深海の力なんて、そのほんの一部にすぎない。
本来の深海の力は全能の魔法。
愛も、勇気も、関係ない。指先ひとつで、過去も未来も、物質も感情も……全宇宙の何もかもを、思い通りに変えてしまえる。
セカイに吹く風、運命、そのものなんだ。」
からす「し、しかし!コメットは……イフクーンに酷いことをされて、悲しんで……最終的に、自分で、自分の心を壊して、消してしまったのだろう?
自分がセカイを司る魔法使いだったことも、深海の力の存在も、人格も、正義の心も……何もかもを忘れて、失って……!
そして、金魚八に封印されていたはずだ。
コメットが心を取り戻した瞬間が、このセカイの終わりだって、そういう話だったじゃないか!
カチョロさんに剣を向けるなんて……。どうして。
……いったい、何が起きてるんだ!?」
カチョロ「コメットさんはね……。いや、この話は、……する必要、ないか。からす君、それよりも早く、さくら君たちを救出しよう。
僕が時空のトンネルに降りて、みんなを連れて戻ってくればいい話なんだけど……嫌な予感がするんだ。簡単なことじゃないかもしれない。」
そのとき、宇宙船内のモニターに、ふうがとささめきの姿が映し出された。
ふうが「おれだ~、ふうがだ!!からす!カチョロ!それから~、ことお!♪
宇宙の深層にいるさやらん…いや、コメットのことは、ゆずはにまかせろ!
ゆずははひとりで、霊魔法で深層を目指してるんだ!」
ささめき「ゆずは君は、もうかなり深いところまで降りてるみたいよ。ふうが兄さんの霊魔法のメッセージも、もう届かないらしいわ。今さら戻ってこいと伝えるのも難しい。黒幕のことは……あいつを信じて、任せましょう。
さぁ早く、さくらたちを助けるのよ!!」
進行状況は、95%……100%……さくらたちの居場所が特定された。

