【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】17話 GWなので最新話を連続公開しました!

小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲームがひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)

オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」

読み始める前に

異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)

本文

青色の不死の星。

星の力の暴走による激しい痛みによって、意識を失っていたからすだったが、諦めない強い心が、彼を目覚めさせた。

深海の力で星の力を包み込み、痛みを打ち消した。ことおの体調も安定させ、体を揺さぶり、起こそうとする。

からす「ことお君!起きろ〜!!」

ことお「……ハッ!」

目を覚ましたことおは、信じられない!!!といった表情で、からすを見た。

からす「ん?どうしたんだ?」

ことお「どうして起こしたの!?俺はこのまま睡眠し続けたかったんだよ!目が覚めたら、オキたちが全部解決しててハッピーエンドを迎えるっていう作戦だったんだよ!?」

からす「ハッピーエンドというものは、そんなに甘くないんだな〜。

さくら君、オキ君、イフクーン、クロサキ君……彼らは今、さやらんが潜む時空のトンネルの奥深く、宇宙の深層を目指して進んでいる。きっと、真・K-時空逆転マシーンを使ってるはずだ。

わたしたちは、彼らを信じて、力を合わせて魔法のコンピューターを操作し、サポートに徹しよう!

ここにいるさやらんのことは、今はカチョロさんに任せるんだ。

深海の宇宙に残された時間は、もうわずか。だが、まだ散っていない。

ブレイブ☆タコキスも見つけて、宇宙を取り戻してもらわないと。

わたしたちも、今できることを、全力でやろう!!」

からすのキラッキラな瞳と熱い言葉に心を動かされて、ことおは……ああもう仕方ないなぁ〜と、愚痴を言いながらも、魔法コンピューターを取り出した。

ことお「オキやさくらのことは超心配。今、どこにいるのかもわからないし、深層がどこにあるのかさえ、見当もつかない。

それに、真・K-時空逆転マシーンの性能じゃ辿り着けない。……っていうか、俺たちが到達できる領域にあるとは、到底思えないんだよね。

さやらんを見つけて、食い止めて、生きて帰って来られるのか……?はぁー〜〜〜ん???

からす「文句はいいから!早く、さくら君たちが今どこにいて、どんなことを頑張ってるのか、確認するんだ!」

ことおは空中にモニターを表示させ、さくらたちの居場所を検索しはじめる。

ことお「深海の力って、奇跡の力ではあるけど……全自動ハッピーエンド製造機ってわけじゃないじゃん?使うのは俺だからさ。俺のメンタルと技術に、全部かかってる。時間かかるかもしれないけど……真面目モードで探してみるよ。……からすは何するの?」

からすは…マウスをカチカチと操作している。

からす「……宇宙の崩壊を、少しでも遅らせないと。」

ことお「えっ、そんなのできるの!?」

からすは何も答えず、ただ真剣な表情で、静かにカチカチカチカチ、カチカチカチカチ押し続けている。

ことお「……ふーん♪やっぱり、からすって、最強じゃん。」

からす「さやらんの様子からも、目を離さないようにしような……。ふたりの戦いがどうなるのか、どんな次元のものになるのか……正直、想像すらできないから。」

ことお「うん、あれは……絶対、見逃せないね♪」


― ― ― ― ―

さやらんは、魔力を集めた剣を振り上げ、カチョロに斬りかかった。

カチョロは、流れるような華麗な動きで、その一撃を受け止めた。

刃と刃がぶつかり、火花が弾ける。

乾いた金属音が空気を裂く。

さやらんは殺意を纏った剣を振るい、迷いなく攻め続けた。

攻めて、攻めて、攻め続ける。

残酷で正確な一撃が繰り返される。

しかしカチョロは、恐れることなく、すべての攻撃を受け流す。

美しい剣さばき!

二人の表情は、ほとんど変わらない。息が乱れることもなく、言葉を交わすこともない。

ただ、視線の奥で、感情がメラメラ燃えている。

刃と刃がぶつかる度に、お互いの魔力と魔力が交差し、輝きをはなつ。どちらかの魔力や剣術が上回ると刃は欠けてしまう。

ひとつの宇宙を。愛する命を。未来を。守りたい。

ゆずれない……!

魔法よりも言葉よりも強く、その一振で熱い想いを伝えるように……カチョロは、一歩踏み出して、攻撃を仕掛けた。

肉体の動きと感情、そして空気の流れ、魔力の流れを読んだその攻撃は、的確だった。

カキンッ!

大きな金属音、さやらんの手に衝撃が走り、体全体がしびれた。

思わず手のひらの力がゆるみ……剣が離れて、地面に落ちた。

カチョロがその剣に、剣先を向けた……魔法が放たれ、さやらんの剣は、光の粒に変換され、空間に溶けて消えた。

カチョロ「……。」

さやらん「やるじゃん。でも、まだ負けた気がしない。手を抜いていたからね。」

さやらんは魔法で新しい剣を創造し、握り心地を確かめた。「準備完了♪」と、にっこりと笑いかけた。

さやらん「……本気、出してしまおうか♪」

― ― ― ― ―

(ちわた、まちる、たんぽぽ、コック早乙女、モジ、ピピヨン、ちえる店長)

故障し、全機能が停止した宇宙船。

宇宙をぷかぷかと浮かぶ、ただの箱。

みんなは眠ったり、食べたりして、疲れと緊張を誤魔化しながら過ごしていた。

ちわたはずっと、窓際にいた。連れ去られたほめとのことを考えながら、お菓子を食べながら、外……星と暗闇を眺めていた。

ちわた「どれくらい時間、経ったんだろ……ほめと、大丈夫かなぁ。お父さんもお母さんも、みんな、心配してるかあ。カチョロ、まだかなぁ?……ん?何だあれ?」

窓の外に、眩しい光が見えた。ちわたは目を細めた。明るくて美しい光景。

しかしそれは、タコタコタコ星の爆発、そして、超新聖爆発が引き起こした、星のはなびらが舞い広がる、宇宙の終わりの始まりだった。

頭の中は、ほめとのことでいっぱいだった。不思議な光景が何を意味するのかも、よく理解できないまま、理解しようとする元気もないまま、ただ、ぼうっと、眺めていた。

光は少しずつ、こちらへ向かって広がってくる。

静かに。音もなく。

ちわたの肩を、コック早乙女がトントンと叩いた。

コック早乙女「今、少しよろしいですか?」

少しびっくりして……ちわたが振り返る。

ちわた「ん? コック早乙女さん、どーしたの?」

コック早乙女は、窓の外の光を見つめながら、いつもより低い声でつぶやいた。

コック早乙女「……あれは、良くない現象かもしれませんね。」

ちわた「良くないって……?」

コック早乙女「方角的に、あの光はタコタコタコ星の方向です。

おそらく、星の大爆発が起きています。あの光に巻き込まれてしまえば、ただではすまないでしょう。」

星の爆発……?ちわたの心の中に、ぽっかりと穴が開いた。その穴はじわじわと広がっていく。考えるのが怖い。確かめるのは、もっと、こわい。

ちわた「……逃げた方がいいってこと?」

ぽつりと呟くように尋ねたが、返事はなかった。代わりに、すすり泣く声が返ってきた。しくしく泣き始めたコック早乙女を、ちわたは寂しそうに見つめていた。

もう、どうしようもできない。

その時……。たんぽぽが近づいてきて、そっとコック早乙女のほっぺにハンカチをあてた。

たんぽぽ「コック早乙女さん、悲しいの?」

たんぽぽは優しく頭をなでた。そして、窓の外に目を向ける。

たんぽぽ「きらきらしてるね……きれい。あれ、なんだろうね?」

ちわた「あれから逃げないとゲームオーバーなんだけど、宇宙船が動かないし……もう、無理だよねって感じ。」

その言葉に、たんぽぽの笑顔がしぼんだ。下を向き、しばらく黙っていたが……

ぎゅっと拳を握りしめて、勢いよく、顔を上げた。

たんぽぽ「じゃあ、頑張って逃げようよ!!」

ちわたが困って、目をそらした。

ちわた「……逃げる方法、思いつかないよ。」

コック早乙女「ぐすん……。」

コック早乙女はまだ泣いている。

その涙は、たんぽぽの勇気へと繋がっていく。

たんぽぽ「ちわたさん、飛べるじゃん!コック早乙女さんも、防御が得意で強いじゃん!僕、ここにいたくないよ。」

たんぽぽの言葉に驚いて……ちわたの瞳は輝いた。

ちわた(そうだ。飛ぶのが得意なのはオレだけだ。オレが諦めてしまったら、皆、ここから逃げられないんだ。)

顔をあげると、感情があふれ出してきた。

ちわた(何のためにレッドデビル☆カンパニーで、あんなに厳しい魔法研修を頑張って来たんだよ。

全部……全部、きっと今日のためだったんだ!

へこんでちゃダメだ……オレ、頑張らなきゃ!!!)

ちわた「ありがとう、たんぽぽ!……元気出た!」

たんぽぽ「そ、そうなの?元気出たなら…よかったけど……?」

ちわたは、笑って、コック早乙女の背中を勢いよくたたいた。

ちわた「コック早乙女さん、泣くなよ!オレたち、絶対大丈夫だから!」

コック早乙女は困惑している。

ちわた「コック早乙女さんって……飛べる?」

コック早乙女「と、飛べないことも……ないですが……?」

ちわた「よしっ!」

ちわたはくるりと振り向き、大声で呼びかけた。

ちわた「まちるちゃーん! みんなも、起きて! こっちに来て!!」

ベッドから出てきた仲間たちが、不安そうにしながらちわたのもとに集まってくる。

その目の前で、ちわたは宇宙船の脱出口を開いた。闇の宇宙がすぐそこに広がる。

ちわたは拳を握りしめた。

ちわた「今から……ここから飛び立つよ!!!」

― ― ― ― ―

なにもない宇宙空間を、当てもなく、ただ希望を信じて、心を一つにして、飛びはじめる。

― ― ― ― ―

ちわたはモジを背中に乗せ、ちえる店長を両腕でしっかりと抱えて、一直線に飛んでいた。まちるはピピヨンをぎゅっと抱きしめながら飛んでいる。

コック早乙女は、たんぽぽを抱えて飛んでいるが……ぐるりと回転したり、ふらふらと蛇行したりしていた。

たんぽぽ「コック早乙女さん、翼あったんだね。知らなかったなぁ。」

コック早乙女の背中には、大きな黒い翼が広がっている。

コック早乙女「……魔族ですので。ですが、翼を使うのは三年……いや、五年?いや、十年ぶりかもしれません。不安定で申し訳ありません。」

たんぽぽ「ううん、大丈夫。ジェットコースターみたいで楽しいよ。」

モジは、ちわたの背中にしがみついたまま、そっと振り返った。あの光は、確実に広がっている。さっきまで宇宙船があった場所も、すでにまぶしく照らされていた。

モジ「……追いつかれちゃう。」

ちえる店長「……なんとかなるよ。きっと。」

ピピヨン「もう、頭が真っ白だよぉ~。」

その時、ちわたの頬に、緑色の光の点が、チラチラと映った……その直後、

魔法銃のレーザー光線が撃ち放たれた。

ちわたは反射的に、大きなバリアを展開し、身を守った。絶望のイフが五人、すぐ目の前まで来ていた。絶望のイフたちは、タコタコタコ星ならどこでも買えるような、小さな魔法銃を手にしている。

ちわた「こ、こっち来るなよバーカ!!!」

声が裏返る。けれど目は、真っすぐ敵をにらんでいた。

モジ「うゎぁぁ~…お、おしまいだぁ!!ちわたさん、どうするの…ぐすん…(泣)」

ピピヨン「五人!?五人もいるよ!?さいあく~っ!!」

コック早乙女「ど、どうしますか……。逃げますか?た、た、戦いますか???」

ちえる店長が魔法の傘を取り出し、構えた。もう一本を、ピピヨンに投げ渡す。まちるもすぐに反応し、魔法で盾を作り出し、ちえる店長たちへと投げ渡した。モジは勇気を振り絞って、コック早乙女の背中に飛び移った。

ちえる店長「できることなら、なんだってしよう。諦めないよ。」

コック早乙女「ちわたさん、皆サマは……ワタクシが守ります!だから、負けないで…!!」

たんぽぽ「がんばれー!がんばれー!」

ちわた「よーし!!……かかってこい!!」

戦う覚悟が湧き上がった……その時。

ゴオォォォッ!!!!!

宇宙の彼方から、巨大な宇宙船がハイスピードで接近してきた。

急停止し、扉が開き……中から女の子二人が飛び出してきた。

さくま「こいつらは我らに任せろ!お前たちは、今すぐ宇宙船に乗れ!!」

むむ「ほら、急いで!!あたしたちは負けないから!!」

助けが来た!希望が咲いた!

ぱあっと、ちわたたちの顔に笑顔が広がった。

― ― ― ― ―

(ささめき、むむ、さくま、とおこ、ちわた、まちる、モジ、ピピヨン、ちえる店長、コック早乙女、たんぽぽ)

― ― ― ― ―

ささめきたちの宇宙船は、安定したスピードで飛んでいた。窓の外に、星の爆発の光がまだ見える。でも、その輝きは、遠ざかっていた。

ちわたたちを宇宙船に乗せたあと、さくまとむむは、わずか三秒で絶望のイフを倒した。あまりの強さに、絶望のイフたちは青ざめて逃げていった。

助けてくれてありがとう!!そう言って笑顔になったのも束の間、船内には緊張感が漂っていた。操縦席では、ささめきが一生懸命に、操縦を続けている。むむとさくまは、戦闘態勢を崩さず、出口扉の前で待機している。

実はこの宇宙船、今まさに敵に追われていた。

しかしとおこが「タコタコタコ星付近で助けを求める人がいる」と深海の力で予知したため、ささめきたちは危険を承知で引き返し、ちわたたちを助けに向かったのだ。

敵は近付いてきていたが、彼女たちは、救出できたことを誇りに思っていた。

とおこはキッチンで、ゆっくりとアイスティーを用意し、みんなのところへ運んできた。

とおこ「大丈夫ですわ♪彼女たちは、とっても頼りになるのよ。さぁ、座って。お茶にしましょう♪」

コック早乙女「ありがとうございます、いただきます。」

たんぽぽ「おいしいよ。あ、かえるさんだ~♪」

かえるたちは、魔力を不安定にさせる特性の効果がなるべく少なくなるように、端っこに集まって、ほのぼのとトランプで遊んでいた。たんぽぽは立ち上がり、かえる達のところへ行き、一匹づつ頭を撫ではじめた。

たんぽぽ「一緒にトランプしようよ。コック早乙女さんも来て~!」

コック早乙女「今行きますね♪」

不安はまだ完全には消えていない。でも、いつの間にか、笑顔が戻っていた。とおこが「ほめとさんもカチョロさんも無事ですわ」と未来を予知してくれたおかげで、少しだけ安心できたのだ。

モジ「おいしい……なんだか泣きそう。」

ピピヨン「疲れたよね。でも、安心した♪」

ちえる店長「生きた心地がしなかったよねぇ……。」

ちわたはアイスティーをぐいっと飲み干し、笑顔になった。

ちわた「本当にありがとう。何回言っても足りないくらい!」

とおこ「うふふ♪ あたくしも、素敵なお友だちができて、とっても嬉しいですわ♪

お兄様もからすさんもご無事みたい。イフクーンさんたちも頼もしいですもの。こうして皆さんとご一緒なら……宇宙の旅も悪くありませんわねぇ♪」

ささめきは操縦しながら、ちわた達の方をちらりと見て、ふふふ♪と小さく笑った。

ささめき「あんたたち、諦めなくてよかったわね。」

とおこがにこにこしながら、アイスティーにストローをさして、そっとささめきの口元へ差し出す。

とおこ「はい♪どうぞ♪」

ささめきは、ちょっと照れくさそうに笑いながら、口を付けた。

ささめき「……ありがと♪」

さくまは監視モニターをじっと見つめていた。

さくま「……おい、ささめき!!敵が消えたぞ!」

さっきまで映っていた敵の姿が、跡形もなく消えた。

画面には、暗闇が広がっている……まるで最初から何もなかったかのように、気配すらも残っていない。

ささめき「相手はホログラムのさやらんなのよ。油断しないで、飛び続けるわよ!」

ささめきがモニターに目を向けた瞬間……バチバチッとノイズを走らせ、真っ青に染まった。

ささめき「なに!?」

むむ「えっ!?こ、壊れた!?」

さくま「ハッキングか!?」

バリッ!画面に大きなひびが入る。何度も叩きつけられるような衝撃が走った。

画面の中に、ゆらりと人影が映り込んだ。バンッ!ついにガラスが割れ、破片が飛び散る。

そこから現れたのは……魔法のホログラム「幻影のさやらん」。

操縦席の背後に静かに降り立ち、不気味な笑顔を浮かべていた。

ささめき「皆、逃げて……きゃっ!!

背後から現れた手が、ささめきの口をふさいだ。

人質に取られそうになった……その瞬間。

モニターに人影が映り込んだ。

そして、画面の中からが飛び出してきた。

男は勢いよくドロップキックをかますと、さやらんを壁に叩きつけ、そのまま軽々と抱き上げた。窓へ向かって放り投げる。

ガラスが砕け、さやらんは宇宙空間へと放り出された。

その男は大ジャンプし、操縦席に飛び乗った。

ふうが「よし、行くぞ〜!緊急脱出!」

宇宙船が急発進する。

ちわた「うわぁあ!!」

むむ「いったーい!」

皆、あまりのスピードに尻もちをついたり、床を転がったりしている。

ふうが「ケガしてないか?」

さくま「全く……お前のせいで頭を打ったぞ!!」

むむ「みんな、大丈夫~?」

ちわた「びっくりしたけど、オレたちも無事だよ~!」

ふうが「ごめんごめん!」

ささめきは、ふうがの方を見て、小さく微笑んだ。

ささめき「ふ、ふうがさん。助けてくれて……ありがとう。」

ふうがは、緊張感など一切感じていない様子で、宇宙船の操縦を楽しんでいる。無邪気に、マイペースに、ハンドルを動かしながら、ふうがはささめきと目を合わせ、にこっと笑った。

ふうが「久しぶり、ささめき。今回は、お前のこと、守れると思うぞ!!!」

記憶を失い、悪霊となった兄。もう二度と会えないと思っていた兄のひとりが、長い時を経て、記憶を取り戻し、自分を助けに来た。ささめきはこみ上げる想いをぐっとこらえて、強気に笑ってみせた。

ささめき「きらめき兄さん……あんた、これまでのこと、反省してるの?……何も変わってないわね、ほんと。
まあいいわ、久しぶり。

……でも、まだ油断しないで。あいつ、きっと、追ってくるわよ。」

ふうが「おれがやっつける!全員、隠れろ!!」

みんな一斉に、テーブルの下やクローゼットの中、キッチンに隠れた。

ふうがの背後に、さやらんがゆらりと姿を現した。余裕の笑み……

さやらん「やっつける、だって?君が……?本当の死を、教えてあげようか?」

ふうが「やれるものなら……

…やってみろ!!」

ふうがは、振り返る動作にまぎれて、シャツの胸ポケットから、水鉄砲を取り出した。
この水鉄砲は護身用の特別製だ。

ゆずはと別れて(作戦を立てて別行動している)、ささめきたちの宇宙船に向かう時に忍ばせておいた。

水鉄砲の噴出口の蓋を開けると、

……ぶわわっと

謎の悪臭が漂った。

さくま「ガッ!、なんだこのニオイ!?」

ふうがは水鉄砲を構えた。

コック早乙女「ウッ……。」

たんぽぽ「やだぁ!お鼻、つままなきゃ!」

みんな泣きそうになっている。

……さやらんの笑顔は、目も口元も、ぎこちなく歪んでいて、イヤそうにしているのが明らかだった。

ふうが「霊魔法で100年かけて作った、すっげぇくさい液体!う〇こじゃないから、そこは安心しろよ!」

ふうがは、高く飛び上がり宙返りして距離を取った。一歩踏み出したさやらんの隙をつき、流れるような動きで、水鉄砲をさやらんに向けて放つ。一瞬の隙、タイミングを逃さない。練習を重ねた動作で、瞬く間に弱らせていく。

さやらん「さ、さいあく……なんだよ、この趣味悪い攻撃!!高性能な幻影だから、匂い感じちゃうんだよ!?」

顔をあげたさやらんの視界に映ったのは、ふうが×10。影分身の術を使い、あちこちに出現していた。分身した全員が、例の悪臭付き水鉄砲を構えていた。

さやらんはげんなりとため息をついた。「付き合ってられないな……」とあきれて、フッと姿を消した。

ふうが「やった~!!やっつけたぞ~!!あいつ、おれを怖がって逃げて行った!」

勝ち誇るふうが。

しかし、ささめきが怒りの形相で顔を出した。

ささめき「この匂い、どうしてくれるのよ!!責任とれるんでしょうね!?」

ピピヨン「うわ~ん、嫌な臭いが残ってる~!!泣」

モジ「ウッ…ぅう……く、苦しい……」

ちわた「まちるちゃん、大丈夫かぁ!?」

まちる「無理かも……。」

一斉に詰め寄られるふうが。

ふうが「わ、わ、悪かったって!!」

全力で謝り、慌てて霊魔法で消臭作業に取り掛かった。

― ― ― ― 

青色の不死の星。

からすとことおは、身を潜めるようにして、じっと息をひそめていた。目の前で繰り広げられる、カチョロとさやらんの戦いはハイレベルで言葉も出ない。ただ、ぎゅっと拳を握りしめ、見つめ続けていた。

超新聖爆発による宇宙の崩壊は、すでに目の前まで迫っている。空中には、様々な星の、星のはなびらや光の粒が、流れ込んで、ふわふわと漂っていた。

まるで夢の中……しかし、響き渡るのは鋭い金属音

火花を散らし続けていた。

さやらんの剣の刃は、圧倒的な魔力を宿しており、太陽のような光を放っていた。

しかし、カチョロの剣は、刃が欠けている。

魔力の気配もほとんど感じられない。

かすかに光ってはいるが……それは今にも消えてしまいそうな、小さな灯(ともしび)のようだった。

一方的な攻撃が続く。

カチョロは必死に受け止め続けているが、そのたびに、削られ、削られ、剣は細くなっていく。

息は荒く、大きく振りかぶる動作……もはや余裕はなかった。焦りの表情も現れている。

それに対して、さやらんはまるで別の存在だった。

最初と変わらないスムーズな戦い方、表情は静かで、どこか無機質。

呼吸すらしていないように見える。

カチョロ「おかしい……」

激しい攻撃を受け止めて、また刃が欠ける。衝撃に腕がしびれて、全身がこわばる。

カチョロ「おかしいおかしいおかしい、こんなのおかしいよ……!!」

ついにカチョロの剣から、光が完全に消えてしまった。

魔力が尽きて、ただの鉄に戻った剣。

さやらんの一撃を受け止めきれず、音を立てて砕け散る。

剣はカチョロの手から離れ、地面に乾いた音を立てて落ちた。

さやらんはカチョロの左胸に、ゆっくりと刃先を突きつけた。

しかし、とどめは刺さなかった。

さやらんは刃を構えたまま、じっとカチョロを見つめている。

まるで、カチョロの言葉を待っている、期待してるそんな表情で。

敗北を実感し、カチョロの心は震えていた。しかし、その震えは悔しさや焦りではなかった。それどころではなかった。

カチョロの心は、説明のつかない違和感と恐怖に支配されていた。

さやらんが満足そうに剣を降ろした。

カチョロ「……君は、さやらんじゃない。

……君は本物のさやらんじゃない!!」

声が震える。

カチョロ「たしかに、さやらんは嘘がうまくて、魔法が得意な、金魚八の幹部だった。未来の魔法も、古代魔法も、体術もセンスも……誰もが一目置く特別な存在だったことは、間違いないよ。

僕は確かに、時空のトンネルの深層に、さやらんがいるという気配を感じ取っていた。彼は水の星、海底の調査を好んでいたし、時空のトンネルの先にまで魔法を飛ばす……そんな器用な魔法も、さやらんならできるかもしれないと思ったよ……。

だけど、さやらんにはひとりで時空のトンネルを飛び抜けられるような覚悟と度胸はなかった。

僕が金魚八にいた頃のさやらんは、僕なしでは、トンネルの入り口にすら立てなかった。あの場所を自力で越えて来た?……やっぱり、ありえないよ。

さやらんはイフを恨んでいた。でも、それは僕も、金魚八の組織員みんなが抱えていた、棘に過ぎなかった。イフを複製して殺し合わせるような、そんな残酷なことを、さやらんが準備して、実現してしまっただなんて……信じたくなかった。

僕が抜けたあと、何があったのか、真実は……わからない。わからなくなってしまった。

でも……僕は、戦って、確信した。」

震える声で叫んだ。

カチョロ「君は、さやらんじゃない。

君の魔力は……底なしだ。現実に存在するはずがない。しかも君は今、宇宙の深層から遠距離魔法で戦っている。

そんな戦い方、さやらんには絶対に無理だった。」

カチョロの瞳が、するどく光る……

カチョロ「僕より強いからさやらんじゃない、なんて言わない。

でも、僕は、

自分より強い存在を、

このセカイでひとりしか知らない。」

さやらんは、剣を投げ捨てた。どこか遠くから聞こえてくるような、落ち着いた声で、話し始めた。

さやらん?「もし、キミが戦ってくれなかったら……どうしようかと思って、この子を用意してたんだけど。必要なかったみたいだね。返すよ。みんな無事だよ、愉快で、可愛らしい子たちだった。」

空から、ふわりと光に包まれて、ほめとが落ちてきた。

カチョロはすぐに受け止めた。ほめとはむにゃむにゃと寝ている。

カチョロは涙をこぼしながら、優しく抱きしめた。

さやらん?はゆっくり、からすたちの方を見た。

さやらん?「キミたちが探しているのは……この子たちかな?」

空から、ミニキス、タコパチ、フィカキス、そしてユニタスが降りてきた。からすとことおは、戸惑いながらも、なんとか全員受け止める。みんな、すやすやと眠っている。

さやらん?「すごい魔法で、宇宙を元に戻すつもりなのかい?やってみるといいよ。消えてしまった仲間も、深海の力があれば……帰ってこられるかもしれない。」

不思議な瞳で、からすを見つめる。そして、優しく微笑みかけた。未知の気配がする視線と笑顔に、からすはぞわっと震えた。次に、カチョロを見る。

「……でも、その程度か。」

その瞬間、超新聖爆発の光が止まった。宇宙が崩壊をやめた。まるで、時が止まったかのように。

静かに背を向け、自分のの中へと歩いていく。

に溶けるように消えていく。

【続く】

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