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お昼時・にいすいの自宅の中庭
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二人しか乗れない、小さくて窮屈な宇宙船。でも丸っこくて可愛いから、僕のお気に入り。
汗だくになりながら、僕は宇宙船の整備をしていた。
ベンチに腰掛けたマリリンが、その様子をじっと見つめている。その隣に座っているのは、僕の娘のレクチェール。二人で棒アイスを食べながら、楽しそうにしていた。
レクチェール「違う星に旅行なんて、楽しそう~♪」
マリリン「今回は俺とにいすいが、タコタコタコ星がどんなところか確かめに行くって感じだな。面白かったら、にいすいにもっとでっかい宇宙船を買ってもらって、次はみんなで行こうぜ!」
にいすい「(え~……汗)」
レクチェール「うんうん♪……私、夏休みの宿題がピンチなんだよね。そろそろやりはじめないと……そうだ!タコタコタコ星の風景写真、撮ってきてよ!課題研究に使えそう♪」
マリリン「おう、まかせろ♪」
そこへ妻のさっちゃんも庭に出てきた。僕の隣にしゃがみ、「お疲れ♪にいすい」と、ペットボトルの麦茶を差し出す。そして、腕まくりして工具を手に取ると、魔法をまとわせ、宇宙船のカバーを開けて精密な内部を楽しそうにいじり始めた。
さっちゃん「元々、宇宙船に乗る仕事をしてたし、機械いじりは私の方が得意かもね。古い宇宙船だからちょっと心配だけど、私に任せて。
……ほら、これで大丈夫!にいすいなら、上手く乗りこなせるはず♪宇宙旅行、気を付けて行ってきて!」
にいすい「ありがとう。さすがさっちゃんだ♪気を付けて行ってくるよ。」
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お昼時・にいすいの自宅の中庭・宇宙船内
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地面が揺れたり中庭が燃えないように、そして大きな音が外に漏れないように、周囲に魔法のバリアを張る。操縦席でスイッチをピコピコ操作し、赤と青のランプを何度も確認する。目的地の設定はオッケー。
右手でハンドルを握り、左手で発進用レバーに手をかけた。
にいすい「マリリン、シートベルトした?」
隣に座るマリリンに視線を向けると、彼は顔を青ざめさせ、ガタガタと震えていた。
マリリン「中止だ、中止!こ、こんなの怖すぎる……!!!さっき整備したばかりの古い宇宙船で、しかも使ったこともない魔法で強引に加速する予定なんだろ!?怖い怖い、墜落しちまうって……!!はぁ、はぁ……」
僕を見つめるマリリンの表情は、泣き出しそうなくらい必死だった。
にいすい「そんなに心配しなくても大丈夫だって。すぐ着くから♪」
マリリンのシートベルトをしっかり締め直し、問題ないことを確かめる。
にいすい「気を使わず、力加減もせず、学校のことも座敷童としての立場も忘れて……強い魔法使いと、本気で魔法バトルできるなんて!
あぁ、楽しみでうずうずする!ずっと……やってみたかったんだよね。
タコタコタコ星にはね、「滅んだ星をまるごと復活させる回復魔法」とか、「一撃で星を燃やし尽くす攻撃魔法を使える魔法」があるんだよ!タコタコタコ星って全部が派手なんだ♪
さぁマリリン、10秒後に飛び立つよ!」
マリリン「や、やめた方がいいって……。」
カウントダウンを開始する。
胸の高鳴りが止まらない。冒険心がきらめき、爆発するみたいにわき上がる。
さぁ、発進だ!!
レバーを一気に引く。
轟音とともに炎が吹き上がり、全身に重圧がのしかかる。
振動と熱気に包まれながら、宇宙船は勢いよく宙へと飛び立った。
マリリン「ぎゃあああ!!!!」
宇宙へまっすぐ突き抜ける。
息が止まりそうになるほどの、想像を超える迫力と加速。
空を抜け、星を抜け、あっという間に真っ黒な宇宙空間へ放り出された。
古い宇宙船は不安定で、天井と床が何度もひっくり返り、船体は高速で回転する。視界がぐるぐると回り、体がシートに押しつけられる。
まずい!何とか立て直さなければ!!
僕は全身の力を込めてハンドルを握り、ぐらつく機体を必死に立て直した。
こ、こんなのやったことない!……でも、
なんだか最高にワクワクしてきた!!
安定して飛んでいるのを確かめてから、僕はハンドルを離し、ほっと息をついた。
腕がしびれる……いてて。
にいすい「マリリン、大丈夫?」
隣を見ると、マリリンは肩で息をしていて……、震え声で答えた。
マリリン「なんとか……な。にいすい、お前やっぱすげぇな。いつも尊敬してるけど、今はもっとだ。百年も生きてると、心の落ち着き方が違ぇんだな……。なんでこんな状況で楽しめるんだよ。」
にいすい「楽しまないともったいないからね。本場の桜えびえびタコラーメンと、レッドデビル☆カンパニーのラーメン部の社員さんが待ってるよ♪マリリンも勇気だして!」
マリリン「……!、……っしゃ!俺も気合い入れてくぜ!」
マリリンは自分の頬をぱんぱんと叩き、覚悟を決めた様子だった。よろしいよろしい♪
窓の外に広がるのは、滅多に見られない宇宙の絶景。黒と紺が溶け合い、ときおり魔法の光の粒がふわふわと漂う。
その光景を興味津々に眺めるマリリンの横顔は、どこか子どもらしくて、ちょっとかわいかった。
僕はラムネから受け取った大加速魔法陣のメモを取り出す。巨大な魔法を扱うため、シートベルトを外して立ち上がる。
……やってみよう。
目を閉じ、頭の中で何度も魔法陣をなぞり、正確さを確かめる。
ゆっくりと握りしめた右手を高く掲げ……決意を宿した目をカッ!!っと開いた。
魔法が大爆発し、船内は白く眩い光に包まれた。
僕は全身の力を込めて手を床に叩きつけ、魔力と魔力を結び合わせる。
ひとつの大魔法が完成し、宇宙船に流れ込む。
にいすい(……うまくいった!)
成功を確信した、その瞬間!!
宇宙船が光の花びらのように舞い散りはじめた。
にいすい「……え? ……えっ!?!?」
マリリンの腕を掴み、引き寄せて抱え込んだ。
僕は慌てて浮遊魔法で体勢を立て直す。
そして……宇宙船は透明になって、音もなく宇宙に溶けていった。
広大な宇宙空間に、生身で、ふたりきり。
取り残された僕らは、ただ困惑するしかなかった。
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一方その頃 ラーメン店(桜えびえびタコラーメン)
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ラムネ「間違えちゃった☆大加速魔法じゃなくて、宇宙船を消す魔法をおしえちゃった。
てへぺろ~ん♪
……あ、いらっしゃいませ~♪カウンター席どうぞ~♪」
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宇宙空間
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マリリン「おい、にいすい!どういう状況なんだ。宇宙船が消えちまったが!?これは想定内なのか?……まさか、失敗して取り残されたんじゃねぇよな!?」
にいすい「そ、そのまさかだよ……。恐らく、教えてもらった魔法陣そのものが間違っていたんだ。……ちょ、ちょっと待って、どどどどうしよう!?信じられないんだけど!?」
マリリン「はぁぁ~~!?お、俺ら、終わったかもな……。」
にいすい「そんなぁ……。」
しびれた腕でマリリンを抱き寄せる。重くて、しんどい。けれど必死だ。はぐれたら、もう二度と会えないかも。絶対に離さない。
なんとかしなきゃ。でも、声も魔法も届かないよね……どうしよう……!?
マリリン「そうだ!にいすい、居場所を知らせろ!!誰かが助けてくれるかもしれねぇ。花火みたいに、魔法の光と音で合図を出すんだ。」
マリリンは僕の腕を振りほどき、ガシッと背中に飛びついてきた。
マリリン「俺を抱えたままじゃ、全力で魔法が使えねぇだろ。つかまってるから安心しろ!絶対に離れねぇから!だから、お前は本気でやれッ!」
にいすい「……わかった。宇宙に、僕らがここにいるって知らせる、大きな花火を咲かせるんだ!」
全力の魔法を注ぎ込み、魔力を操って光をひとつに集める。
そして、一気に解き放った。
. . • ☆ . ° .• °:. *₊ ° . ☆
にいすい「にいすい☆スパーク!!!」
. . • ☆ . ° .• °:. *₊ ° . ☆
闇の宇宙に、眩しい花火が大きく咲き誇った。
……そして、また暗闇へと戻る。
聞こえるのは、僕たちの息遣いと、マリリンの服と僕の服が擦れる音だけ。
ダメか……そう思ったその瞬間
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僕の花火をはるかに凌ぐ大きな光が
視界いっぱいに広がった!
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宙を覆うように、無数の魔法陣が展開される。
これは……魔法!?いったい、なにが……!?
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魔法陣の中心から、タコタコタコ星の伝説の魔法使いが現れた。彼の肩には小さなタコさんが、ちょこんと座っている。
そして、僕たちへと手を差し伸べる!
ブレイブ☆タコキス「もう大丈夫だよ!僕は「ブレイブ☆タコキス」
このワープ魔法陣に入れば、タコタコタコ星に一瞬で着くよ!♪」
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タコタコタコ星 レッドデビル☆カンパニー・本社 社長室
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高い天井にきらめくシャンデリア、広々とした社長室。……社長の姿はない。
魔法陣からワープしてきた僕とマリリンは、そのまま床に放り出された。
にいすい「うわっ!」
マリリン「ぅお~!」
後から飛び出してきたブレイブ☆タコキスが慌てて僕らをキャッチ!……したものの、その勢いでバランスを崩し、全員壁に激突した。
肩に乗っていたタコさんもポーンと宙を舞い、遠くへ飛んでいった。
同時にブレイブ☆タコキスの姿がぼやけ、変身が解けた。
床に転がって現れたのは、二人の青年。え!?彼ら、合体変身して、ひとりの「ブレイブ☆タコキス」になってたんだ!?タコタコタコ星の魔法、すごすぎる!まるで夢を見てるみたい。
……そのとき、ハッと気づいた。あのとき……もう五十年近く前か……星々と宇宙が崩れかけたあの大事件で……宇宙を救った伝説の魔法使いたち……目の前にいる彼らも、そのひとりだったんだ。
ブレイブ☆タコキスを形作っていた一人目の青年、メガネをかけており、爽やかで優しそうな「ミニキス」は、目を回してふらついている僕とマリリンを見て、慌てて声をかけてきた。
ミニキス「大丈夫か!?めっちゃ怖かったやろ!ラムネから「間違えた魔法を教えちゃった☆」って連絡来たときは、冷や汗止まらんかったわぁ。」
にいすい「ありがとう、助けてくれて。はぁ、びっくりしたよ。まだまだ寿命残ってるのに、終わっちゃうかと思った。マリリンも大丈夫?」
マリリン「ああ、大丈夫だ。生きててよかった、安心したぜ……ありがとう。」
ミニキス「ケガしてへんのやったら、よかったわ♪オレはミニキス、よろしくな。……タコパチも大丈夫か?」
二人目は、ピアスが似合うやんちゃそうな青年「タコパチ」。タコパチは「よいしょっと!」と声を上げ、勢いよく立ち上がり、サッと前髪を整えた。
タコパチ「全然痛くないし、ぜ~んぜん平気♪僕はタコパチ。レッドデビル☆カンパニーで働いてる。よろしくね!
ラムネは、僕の同僚なんだけどさぁ……ほんとイタズラ好きだよね。きっと僕とミニキスが助けに来るのをわかってて、わざとヘンな魔法を教えたんだよ。でももし、にいすいが光魔法を使ってくれなかったら……見つけるのに時間かかってたと思う。初対面で顔もわからないし、宇宙で迷子になってる人なんて、山ほどいるし?
ラムネ~、やっぱりちょっと自信ありすぎ!」
飛んでったタコさんも戻ってきた。
ミニキス「このタコっぽい生き物は仲間の「フィカキス」。フィカキスも大丈夫か?」
フィカキス「大丈夫やで。にいすい、マリリン、よろしくな~♪オレらのことは呼び捨てでいいし、遠慮せんと何でも話してな♪」
みんなで自己紹介を終え、握手を交わす。
にいすい「でもラムネさんって、そんなイタズラするようには見えなかったけど……。」
マリリン「俺もそう思う。かっけぇラーメン職人なんだ。騙すなんて、しねぇよ。」
タコパチ「それがギャップってやつだよ、ギャップ☆見た目は可愛いのに、中身はイタズラ好き。タコタコタコ星の住民は、大体そんな性格なんだ。観光する時も、ちょっと気を付けた方が良いかもね……特にレッドデビル☆カンパニーの社員は要注意!」
ミニキス「いや、でも、全員じゃないからな!?良い奴もいっぱいおる。例えば、オレとタコパチとフィカキスは、めっちゃ良い奴やから。信用してな。」
マリリン「し、信用していいのか?うーん……。」
その時、社長室の自動ドアが開いた。
現れたのは、タコパチとよく似た雰囲気の、可愛い青年。
イカパチ「タコタコタコ星にようこそ!僕はレッドデビル☆カンパニー社長、イカパチだよ。ちなみにタコパチは僕のお兄ちゃんだよ。」
イカパチ「にいすいもマリリンも、なんかピュアそうで可愛いね。騙されやすそう。こんなの騙してもつまんないのに……ラムネ、暇なのかな?あはッ☆」
マリリン「騙されやすくねぇよ!」
イカパチ「そうなの?でも、タコタコタコ星名物、本場の桜えびえびタコラーメン食べに来たって聞いたよ?」
マリリン「そうだ♪!!それに、レッドデビル☆カンパニーのラーメン部を見学して、ラーメン職人同士でいろんな話をしてみたくて~♪!!」
イカパチ「そんなのないよ???」
一瞬、場の空気が凍りつく。マリリンの表情がみるみる驚愕に変わっていった。
マリリン「な、な、ないって……どういうことなんだよ!?!?!?」
イカパチ「僕の会社で、公認でラーメン作ってるのはラムネ、ひとりだけだよ。
レッドデビル☆カンパニーは、タコタコタコ星の管理と、宇宙ぐるみの救助活動、医療、魔法薬の開発に取り組んでる企業なんだ。だから基本的には、ラーメンは作らないんだよ。
ラムネはもともと研究職だったんだけど、ラーメンにハマっちゃって。
「ラーメン職人になるから退職する!」なんて言いだしたんだよね。
でもね、それは無理。なぜなら、レッドデビル☆カンパニーって一度入社すると、しぬまでやめられない会社だから……♪
勝手にやめたつもりになって出勤しなくても、毎月お給料は百五十タコ万円振り込まれる。どこに逃げても健康診断は強制だし、僕が開発した若返り薬を飲まされて、強制的に長生きさせられる。
しかも敵に捕まってボコボコにされたとしても安心!自動で位置情報を本社に送信して、体内にインストール済の爆発アプリがドカーン☆するから、安らかに永遠に眠れて安心。最高の生涯サポート付き企業ってやつだよ!ほんと、いい会社だよね。
やめる必要なんて、ないよね~☆
……だから僕はラムネの目の前で退職届を破り捨てて、こう言ったんだ。
新しくラーメン部を設立する!君をそこに配属するから、これからもレッドデビル☆カンパニーの一員として頑張ってね♪って。
桜えびえびタコラーメンは、ラムネが一人で勝手に「タコタコタコ星名物」って言ってるだけで、本当は彼が青い星に行ってから考えた、完全オリジナルメニューなんだ。
だからね、タコタコタコ星に来たって、マリリンが期待するような面白いものはないよ。」
膝から崩れ落ちるマリリン。
マリリン「何のために……俺は……!!!」
イカパチ「ラムネの考えてることはわかるよ。いたずら目的っていうのもあるだろうけど……、本心はきっと、「マリリンっていうお気に入りで面白いラーメン職人」を、僕に紹介して、自慢したかったんだと思う。僕もマリリンが作るラーメン、すごく気になるし。食べてみたい。
ラーメン部専用の別館があるんだ。そこの厨房を自由に使っていいから、お願い☆
美味しいラーメン、作ってよ~♪」
マリリン「……裏切られたり、褒められたり……こんな気持ち初めてだ。
ラムネは俺のファンだって言ってたし、嫌いになんてなれねぇし、あいつのラーメンも大好きだ。せっかくここまで来たんだ。気持ちを切り替えて、タコタコタコ星を楽しみつくすことにするか♪
……よし!全部許してやる!ラーメン、作らせてくれ!!」
イカパチ「ラーメン作り、挑戦するんだね♪僕が納得するおいしいラーメンを作ってくれたら……お礼として、新しい宇宙船をひとつあげる♪さぁ、無事にお家へ帰れるかな?」
マリリン「納得?……俺が目指すのは、感動だ!」
マリリンとイカパチが、楽しそうに社長室を出ていく。僕はまだ立ち直れず、呆然としたまま……その背中を見送っていた。
ミニキス「にいすい、大丈夫か?落ち込んでるやん。イカパチさん、あんな風に言ってるけど、帰る手段を用意せえへんほど、ヤバい人ちゃうから、安心してほしい。
最悪の場合、オレらが青色の星まで送り届けるし。青色の星は、友達もいっぱいおるし、行くのも慣れてるんや♪
まぁでも、宇宙船消えてしまったんは、辛かったと思う……。」
にいすい「大丈夫だよ。宇宙船のことは気にしないで。マリリンと僕が無事なら、それでいいんだ。
……帰ることは、そんなに心配してない。マリリンの腕を信じてるから。きっとこの星の環境でも、とびきりのラーメンを作ってくれるはず。」
タコパチ「……もしかしてさ、レッドデビル☆カンパニーの社風の話がキツかった?それとも……何か噂話とか聞こえちゃった?イカパチが星の水道水に若返りの魔法薬を混ぜて、平均寿命を伸ばしてるって話とか……。」
ミニキス「え?そうなん?怖ッ……なにそれ、そんな話、今はじめて聞いたわ。いや、ちょっと、今はその話せんといて……余裕ないわ……。」
タコパチ「え~?わかったよ。家に帰ったらしようね。」
フィカキス「(だからオレたち、全然老けへんの?)」
まだ立ち直れず、沈んだ気持ちを抱えたまま。ため息まじりに、僕は口を開く……。
にいすい「……後悔してるんだ。マリリンに怖い思いをさせちゃったし、ラムネさんの話も、もっとちゃんと聞いておけばよかったって思う。タコタコタコ星のことも、もっとよく調べてから来るべきだったし……宇宙船だって、新しいのを買って、余裕を持って来るべきだった。
……僕とマリリンは妖怪の座敷童なんだ。しかも僕はグループのリーダーで、普段は校長もしてる。いつもは心配性で慎重なのに。守るものもたくさんあるのに。
家族も、笑顔で送り出してくれたけど……本当は、すごく心配かけちゃったんだろうな。」
ミニキスとタコパチ、フィカキスは、うんうんと優しくうなずきながら、僕の話を最後まで聞いてくれた。
ミニキス「……でもな、にいすい。オレにはわかるで?慣れてへんのに、自分で宇宙船操縦して……ちょっと危ないかもって思ってても、それでもタコタコタコ星に行ってみたい気持ち、抑えられへんかったんやろ?
それって悪いことちゃうと思うで。きっと家族にも、そのワクワクが伝わったから、笑顔で送り出してくれたんやと思う。
別に、マリリンのことはちゃんと守れてるし、ケガしたわけでもない。元気そうやん?大丈夫やって。
にいすいが冒険することに慣れてへんから、変に不安になってるだけや。」
タコパチ「そうそう!にいすい、そんな顔してたらダメだよ♪せっかくタコタコタコ星に来たんだし、後悔してる場合じゃないって!
にいすい、魔法得意なんでしょ?魔法バトルって、好き?
……青い星って、優しくて真面目なタイプが多い印象だし、正直、バトルを楽しむ機会って、あんまり無いんじゃない?
レッドデビル☆カンパニーのみんなで、楽しく戦って遊んじゃおうよ!」
沈んでいた心が、一気に浮かび上がった。僕はぐっと顔を上げ、目を輝かせて、「……やりたい!やってみたい!!」と叫んだ。
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レッドデビル☆カンパニー・本社
バトル専用広場
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タコパチとミニキス、そしてフィカキスに案内され、僕たちは外に出た。
そこは見渡す限りのグラウンド。地面も空間も魔法で固められていて、さらに、どんな魔法も通さない、「強力な魔法結界」が展開されている。
ドーム型の魔法結界に指先でふれてみる……ピリッとした感覚がした……ドキドキ。
ここは、どんなに激しいバトルを繰り広げても、壊れることはないように作られた……まさに特別な戦いのための場所なんだ。
振り返ると、さっきまでいたレッドデビル☆カンパニーの本社ビルがそびえ立っていた。空に届きそうなほどの高さ。その周囲には別館ビルがいくつも立ち並び、不思議で壮大な光景をつくり出していた。
感心しながらグラウンドを歩いていくと、ひとりの青年が待っていた。
青年はペコッと頭を下げると、元気よく駆け寄ってくる。
ちわた「にいすいさん、こんにちは!背、高ッ!タコパチさんもお疲れ様です!
オレ、ちわた。ちわたって気軽に呼んでくれ♪レッドデビル☆カンパニーの地面担当で、掘削機とか削岩機を開発して掘ったり整備したり。このバトル専用広場の管理もオレの仕事。よろしくなッ♪」
握手を交わす。ちわたは明るくフレッシュな印象だ。
にいすい「ちわたは、ここでどれくらい働いてるの?」
ちわた「どれくらいだろ?50年くらいかな?」
にいすい「……え?大ベテラン…..!?」
ちわたが腰につけていた、タコ型の可愛いステッキを取り出す。
ちわた「にいすいさん、オレが相手だ!どれくらい強いか、見せてもらうよ♪」
ちわたがその柄をぎゅっと握り直すと、パキンッと音を立て、手持ち式の魔法削岩機へと姿を変えた。まさに地面担当らしい得意武器! ……これで地面を掘るのかな?いや、バトルでどう使うんだろう。
さっきまでフレッシュで無邪気に見えていたちわたが、急に頼もしく、強そうに見えた。
タコパチとミニキス、そしてフィカキスは、ベンチに並んで腰を下ろし、楽しそうにその様子を見守っていた。
ちわた「タコパチさーん、ルールどうする?」
タコパチ「ルールは……無し!
気を失うか、骨を二百六本砕かれたら強制終了!
しぬのは禁止♪」
なんか怖いこと言ってる……。
ちわた「にいすいさんもそれでいい?武器持って、用意できたら始めようぜ!」
にいすい「お、お手柔らかにお願いするよ……。」
武器、か。思いつかない……いや、あれしかない。
僕は魔法で「金棒」を出現させ、手に握った。
節分で鬼役をするときに使っていたものだ。毎年握ってきたぶん、新しく作った武器よりも手に馴染む気がする。
フィカキス「鬼に金棒キャラなんかな?厳ついなぁ。」
ミニキス「お、鬼とか言ったら怒られるで!」
正直、緊張している。けれど、やるしかない。
にいすい「準備、でき……タコパチ「よーいドン!!」
言い終わる前に、タコパチが楽しそうに叫んだ。

