小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲームがひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)
オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」
読み始める前に
異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)
本文
時空のトンネル内では、相変わらず鋭い風が吹き荒れ、重々しい魔法の気配が渦巻いていた。
しかし、ゆずはとふうがの新しい宇宙船は、宇宙へと繋がる出入り口に向かっているわけでもなく、ただ静かに、安定した飛行を続けていた。
※時空のトンネル……宇宙と宇宙を繋げている危険な空間。数えきれないほど存在する。宇宙を駅に例えるなら、時空のトンネルは線路のようなもの。時空のトンネルを行き来できるのは、異次元的なレベルの魔法使いだけで、一般人が迷い込むと二度と元の宇宙には戻ってこれないとされている。
当初、ふうがとゆずはは、さくら、オキ、ユニタスと共に宇宙船に乗り、時空のトンネルを越えて、深海の宇宙の青い星への帰還を目指していた。
しかし、イフの襲撃によって計画は失敗に終わった。
ゆずはは気を失い、宇宙船は真っ二つになった。
ふうがとゆずは、さくらたちは、ばらばらになったが、再会を約束した。
※深海の宇宙……からすの青色の不死の星、ことおととおこの緑色の発明の星、タコダイオウとユニタスのタコタコタコ星などがある皆の故郷。宇宙を司る魔法使いであるコメットが作り出した、特別な宇宙。
その後、ふうがは気を失ったゆずはを抱えたまま、イフからなんとか逃げのびた。
ふうがはゆずはを腕に抱いたまま、時空のトンネルへと飛び込んだ。ゆずはとの思い出が詰まった霊界の力を半分ほど使ってしまったものの、見知らぬ宇宙へ飛ばされることもなく、ふうがは飛び続けた。
※霊界……ゆずはとふうがが1500年以上にわたって閉じこもり、過ごしてきた、ゆずはが支配する思い出の異世界(宇宙)。脱出の際、ふたりはこの霊界を半分ずつ分け合い、それぞれの力を込めた指輪の形にして持ち出した。しかしふうがは、イフから逃れるために、自らの指輪を消費した。
ふうがは必死に飛び続けたが、深海の宇宙への入り口には、あと少し届かなかった。
しかしゆずはが目を覚まし、ギリギリのところで助かった。
目覚めた瞬間、ゆずはは霊魔法で、瞬時に新しい宇宙船を創り出した。
ふたりはその宇宙船へと避難し、危機を逃れた。
※霊魔法……ゆずはが1500年の歳月をかけて編み出した、ゆずは独自の魔法技術。一般的な魔法や、星の化身たちが使う星の力とはまったく異なる優れた力。
ゆずはは霊魔法の千里眼機能で、深海の宇宙の状況を確認した。
さくら、オキ、ユニタスは青色の星の仲間のところへ無事帰ることができた様子だ。
ゆずはは霊魔法のメッセージ機能で……
「オレたちは無事。ふうががオレを助けてくれたんだ。オレが目覚めるまで飛び続けてくれたんだよ。
指輪を落としちゃったらしいけど、そんなの気にしない。ふうがの体も治して、元に戻せた。
とにかく無事で良かった。今もまだ時空のトンネルにいるけど、もう大丈夫。
霊魔法で作った宇宙船の中で休憩してるからね。丈夫な宇宙船を作り直して、さくら君の星に向かうよ。」
と、送信し、仲間たちに無事を知らせた。
― ― ― ― ―
宇宙船の中……ゆずはは体感三十分近く、座り込んで何やら考え込んでいた。
その隣で、ふうがはゆずはを揺さぶりながら、駄々をこねていた。
ふうが「なぁ、ゆずは!ゆーずーはー!さっきから何してるんだ?
もういやだ。こんな嫌なところ、早く脱出して、さくら達のところへ行きたいぞ!」
ゆずは「……もう少しだけ待って。」
ふうが「おれ、さくらと約束したんだ。絶対会いに行くって!
オキとももっと話したいし、ユニタスにも会いたいぞ。
ユニタスの名前はおれが付けたんだ。
守りたいし遊びたいのに、ああもう、いくらなんでも待たせすぎだぞ!?
……ささめきの顔も見たいし。」
ゆずは「……もう少しだけ待って。」
※ユニタス……タコタコタコ星の新しい星の化身。
元々星の化身はタコダイオウだった。タコダイオウは、自身の本体(肉体)を星の地下深くに埋めて隠し、地上では自分そっくりのロボット機体を動かして、ラジコンのような感覚で操りながら「レッドデビル☆カンパニー」で働いていた。霊界で故障した機体を、ゆずはが霊魔法で修理した際、偶然に、まったく新しい人格が生まれる。ふうがはその人格に「ユニタス」と名前をつけ、友達になった。
そして青色の星で、ユニタスは人間のような肉体へと変化した。このとき、元々タコダイオウが持っていた「星の力」や「魔力」のすべてがユニタスへと移ってしまい、ユニタスは新たな「星の化身」となった。「星の化身は自分の星から出られない」というルールは、あくまでタコダイオウ本体に適用されたままだった。
ことおはこの現象についてこう説明した……霊魔法という、この宇宙には存在しない特別な技術で、タコダイオウの本体を超える性能のロボットに作り直したから、宇宙そのものがユニタスこそが新たな星の化身と判断した、と。
タコダイオウの本体は地下から救出された。
クロサキが金魚八の技術と魔法を使って、ロボットを遠隔操作できる特製リモコンを、タコダイオウにプレゼントしたことで、これまで通り、星の外でもロボットを操作できるようになり、この問題は解決された。
※星の化身……星にひとりずついる守り神。星の化身はその星に固有の「星の力」を持っており、多くは魔法や不思議な力を使うことができる。宇宙の法則によって、星の化身は基本的に自分の星から出ることができない。宇宙の力がはたらくため、星の化身は基本的には自分の星から出られない。星の化身が死ぬと、星は透明になって、消滅する。 消滅の瞬間は、光が星全体を包み込み、はなびらのように舞い広がるらしい。宇宙を司る魔法使いコメットが、生み出した存在らしい。
ふうが「もう少しってどれくらい?」
ゆずは「100年くらいかな」
ふうが「はぁ?からかうなよ!!おれは真面目、大真面目なのに!」
ゆずは「お、落ち着いて!今のオレたちが深海の宇宙に突っ込んだって、知恵も攻撃力も足りなくて、やられるだけだ。霊魔法の千里眼機能で金魚八の会議の様子を覗いたの、覚えてるだろ?本当の敵はイフ(イフクーン)じゃない。真金魚八のさやらんと絶望のイフだったんだよ。あいつらに勝てなきゃ、たとえ約束を果たせたとしても、全部を失うことになるってこと!負けるくらいなら……この宇宙船で、永遠に暮らすほうが幸せだ。」
※金魚八……宇宙を司る全能の魔法使い・コメットを封印し、全宇宙(セカイ)を支配している秘密結社。かつて傷ついたコメットは、悲しみの元凶であるイフクーンを深く恨み、目覚めたときには「このセカイを何度でも滅ぼす」と言い残して、自らの記憶を消去した。金魚八はコメットを狭い部屋に閉じ込め、鍵をかけて、管理しているが、目覚めるトリガーは不明で、その強大な力を恐れている。金魚八は「グループ壱」から「グループ七」までの部隊に分かれており、それぞれにおよそ千人のメンバーが所属。さらに、選ばれし精鋭だけを集めた「真金魚八(しんきんぎょはち)」も存在する。幹部は真金魚八のさやらんと、グループ壱のクロサキ。カチョロはかつて、この組織で秘書を務めていた。
※イフクーン……金魚八のリーダー。パンチした相手の心を砕く暗黒の力の使い手。暗黒の力で心が砕かれると、砕かれた生き物の心と魔力が飛び散る。漆黒のガラス片に似たその破片は絶望の破片とよばれ、さまざまな絶望的な運命を実現させる力を持つが、決して万能ではない。絶望した本人の魔力や感情の大きさに左右され、強力なものもあれば、弱いものもある。また、一度使えば破片は消えてしまい、どれほどの効果があるかは実際に使ってみないとわからない。そんなイフクーンだったがカチョロやからすに諭され、ついに心を入れ替え、暗黒の力を手放した。
※さやらん……砂夜らんちゅう(さや らんちゅう)。多忙なイフクーンの代わりに「真金魚八」をまとめ、情報管理を担う幹部として活動していたが、組織を裏切った。 絶望の破片、高度な魔法技術、そして膨大な情報を操る、正体不明の魔法使い。裏ではイフクーンを複製し、暗黒の力を使って、絶望の破片を量産していた。 額に絶望の破片を埋め込まれた「絶望のイフ」を百体ほど従え、セカイの支配をもくろんでいる。現在、さやらんは、かつてカチョロの心を砕いた際に生まれた絶望の破片を用いて、深海の宇宙を消去しようとしているらしい。その素性は謎に包まれており、常にモニター越しやホログラム(魔法の光でできた立体映像)で姿を現すらしい。 そのため、さやらんの生身の体を見た者は誰もいないという噂がささやかれている。
ふうが「この宇宙船で永遠に暮らす~!?ここから様子見てるだけ!?はぁ~?ほんっとバカだな、最悪だ。深海の宇宙にはからすがいる。からすは深海の力を使えるし、カチョロだっている。ほろびそうな星を回復して元に戻す魔法「タコキスヒール☆ギャラクシー」 が使えるブレイブ☆タコキスもいる。負けねぇだろ!!」
※カチョロ(カチョ―ロチロム)……秘密結社「金魚八(真金魚八)」で秘書を務めていた、かつての幹部。コメットが作り出した高度な宇宙「大空(たいくう)の宇宙」の幼い王子だった。しかし、その宇宙は金魚八と、絶望の破片によって滅ぼされ、仲間も故郷もすべてを失ってしまう。さらに、絶望の破片によって過去の記憶までも奪われ、イフクーンに怯えながら長い間、金魚八で働き続けていた。変わるきっかけとなったのは、人間の「ほめと」との出会い。 恋をしたカチョロは、勇気を出して組織を抜ける道を選んだ。「時空の使者」を自称し、時空のトンネルを作り出したり、自由に行き来する力を持つとされているが……その実力の全貌は誰も知らない。
※深海の力……青色の星の化身「からす」が持つ、奇跡を起こす特別な魔法。宇宙を司る全能の存在・コメットの力で、その一部をからすの母・アルコンスィエルが教わって使えるようになった。アルコンスィエルは、自身が消えるとき、すべての深海の力を息子であるからすに託した。この力を扱うには、高い魔力や技術が必要とされるが、何よりも大切なのは愛情であるとされている。
ゆすは「ああ、もう、わかってるよ!オレやふうがが飛び出して、からすさんやカチョロさんの足を引っ張って、深海の宇宙が消滅したらどうするんだよ。そんなことになるくらいなら、宇宙船から出ない方がマシだろ?オレはそれでも全然いいけど、ふうががわがまま言うから、今、どうすればいいのか、必死に考えてるんだよ……。」
ふうが「ゆずはとおれの霊魔法だって強いだろ?足引っ張るとは、思えないぞ……。100年っていうのも意味が分からねぇ……100年もここにいたら、戦いは終わって、みんなしんじまってるかも。」
ゆずは「大丈夫。今、宇宙船の内部時間を50万倍、いや……80万倍。いや、それ以上にまで加速させてるところだから。この宇宙船で100年くらい過ごしたとしても、深海の宇宙では、ほとんど時間は進まない。だから、心配いらないよ。」
ふうが「休憩にしては長すぎるぞ…心、壊れちまうって…。こんなの、いったいなんのために!?」
ゆずは「真金魚八がある宇宙は、時空のトンネルの深層に隠されていて、さやらんの居場所も誰にもわからない。イフクーンは、さやらんはモニター越しかホログラム(魔法の光でできた立体画像)で現れるって言ってた…‥つまり、さやらんは、「深層に身を隠している、宇宙を超えた遠距離魔法の使い手」ってことだ。それだけでもヤバいのに、情報や記憶、精神をコントロールする魔法を使っている可能性もあるんだろ?…‥よく考えてみて。霊魔法は通用しない。」
ふうが「なんでだよ……?ゆずはも、記憶のバックアップをとってたし、キモイ魔法使えるだろ。同じようなものだろ。
絶望の破片は強いけど、深海の力で打ち消せるんだろ?なんで負ける前提なんだよ。」
ゆずは「……霊魔法には弱点がある。その弱点は、からすさんやカチョロさん、他の皆に対して言えることかもしれない。それは……使い手がオレだということだ。
オレが気絶したら霊魔法は使えない。恐怖したり、緊張したりすれば、不安定になる。
そもそも霊魔法はふうがを守りたいという、オレの強い想い、動機があるからこそ、真剣に使いたいと思えるものなんだ。オレがふうがのことが好きなのは、ふうがとの大切な思い出、記憶があるからだ。それが全部消されたら、オレは、戦えない。戦う意味も、生きる意味も無くなる……!
カチョロさんは過去に、金魚八の強力な絶望の破片で記憶や人格を消されたらしいけど……さやらんは、きっと、そういう最悪な手段も使ってくる。
絶望の破片の力は深海の力で打ち消せても、からすさんの記憶を奪われてしまったら、結局何もできないし……。そもそも絶望の破片なんかなくても、さやらんは、彼にしか扱えない恐ろしい魔法をいくつも持っていると思う。」
ふうが「さやらんが本気出したら、心の上書き保存され放題、削除し放題になるかもしれないってことかよ!?急に怖くなってきたぞ……。」
ゆずは「さやらんが直ぐに襲ってこない理由はわからない。でも、何もせずに寝てるわけないし、タイミングを伺っていることはたしかだよね……。いつ襲ってくるのかはわからないけど……その間に、作戦を練っておくべきだと思ってる。100年あれば、何か思いつくかもしれないし、新しい何かを手に入れられるかもしれないって思ったんだ。」
ふうが「そういうことか……。気はのらねぇけど、ゆずはに付き合ってやるよ。は~ぁ、今から人生一回分の時間使って作戦会議かぁ。めんどくせぇなぁ。……作戦、ゆずはは何か思いついてるのかよ?新しい必殺技とか。」
ゆずは「まだ思いついてないけど……勝手に、全員の記憶と人格のバックアップを取っておくっていうのはどうだろう?なにかあったとき、元に戻せるように……。」
ふうが「だめだ!!そんなことしたら、友だちやめるって言われるだろ!!」
ゆずは「良いアイデアだと思ったんだけどなぁ。まぁ、時間は一生分、たっぷりあるから、ゆっくりと考えよう。」
ふうが「とりあえず、アイスでも食おうかな……」
― ― ― ― ―
タコタコタコ星には、イカパチ、レッドデビル☆カンパニー、タコダイオウが待機している。
周辺の宇宙には、ブレイブ☆タコキス、フィカキスが待機している。
青色の星には、からす、さくら、ささめき、さくま、むむ、ユニタス
ことお、オキ、くま、とおこ
イフクーン、クロサキが待機しており、そこにカチョロがやってきたところだ。
かえるは物陰に隠れており、魔力が不安定になる特製は発揮されていない。
青色の星と緑色の星に暮らしている一般人(星の民)は異世界に避難させたため、星には彼らしかいない。
さくら、ユニタスはことおが発明した真・K-時空逆転マシーンを背負っている。
※真・K-時空逆転マシーン……搭載している力や魔力を噴射して、ジェット機になれる、ランドセル型の発明品。噴射する量はレバーで調整できる。絶対おすな!というシールが貼ってあるスイッチを押すと、どこかの時空のトンネルにワープする危険な機能付き。実際に使うには、魔力や星の力を予め搭載しておく必要があり、実用性があるかどうかは不明。同じ機能はオキにも搭載されている。
からすは、暗黒の力を手放したイフクーンのことを信じ、深海の力をわたした。からすはイフクーンだけでなく、このあとさくら君たち、信用できる仲間にも、力をわたすつもりでいる。
からすはみんなを集めて、深海の力を受け取ってほしいということを伝えた。お気に入りのマウスを動かして、魔法のモニターを浮かび上がらせて、遠く離れたイカパチやブレイブ☆タコキスたちともビデオ通話している。
みんなは、からすの大胆な発想に、驚いている様子だ。
からす「今、大丈夫か〜?わたしの声はきこえていたか~?」
…
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「聞こえていたよ。こっちは大丈夫!」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「怪しい宇宙船も宇宙人も飛んでへんし、いつもどおりやわ。」
フィカキス「でも、油断はしてへんで!」
…
イカパチ「タコタコタコ星も、怪しことは起きてないし、平和って感じ♪」
タコダイオウ「あの……全員が深海の力を使えるようにするって話、少し心配なのですが……。」
…
ことお「いいじゃん、もらっておこうよ♪魔法コンピューターパワーアップし放題だし、オキも強化し放題♪面白そうじゃん♪」
オキ「面白そうだよね。くまもそう言ってる。」
とおこ「ねぇ、むむちゃん。深海の力があれば、あたくしも自分の身を自分で守れるのかしら?」
むむ「どうなんだろう……貰っても、使い方わかんないしなぁ。持て余しちゃいそう?」
ささめき「さくまちちゃんやむむちゃんが、強くなるのは想像できるけど、私は魔法も使えないのよ?魔力も技術もないのに、大丈夫なのかしら。少し不安ね……。」
さくま「我も正直、深海の力を使っている自分が想像できないな。」
クロサキ「俺は反対。皆、使い慣れた自分の魔力を持ってるし、突然パワーアップしたら、今まで通り魔法を使えなくなるかもしれねぇじゃん?」
イフ「力が欲しくないのなら、受け取らなければいいでしょう。……ワタクシのときは、問答無用で押しつけられましたが。まさか、レッドデビル☆カンパニーの社員や、金魚八の組織員にまで力を配るつもりですか?」
ユニタス「うーん……。」
カチョロ「……。」
カチョロはからすの考えていることについて、察しがついている様子で、温かく見守っている。
さくら「とりあえず、からすの話を聞こうぜ。」
からす「いろいろな意見があるとは思うが……まずは、わたしの考えを聞いてほしい。
真金魚八がある宇宙は、時空のトンネルの深層に隠されてしまっている。
だが、わたしには、かすかに見えるんだ。時空のトンネルの奥深く、もっと、もっと奥の方に、確かに何かが…さやらんが存在している気配を感じる。ただ、それを誰かにわかるように伝えるのは、とても難しい。感じ取ったところで……星の化身であるわたしは、自分の星から出ることができない。
結局のところ、さやらんの居場所は、わたしと、時空の使者であるカチョロさんの心の中にしかない。つまり、さやらんがどこにいるのかは、わからないということだ。」
カチョロ「……時空のトンネルは、地図に描いて説明できるような、シンプルな構造ではないからね。僕なら目的地に直接つながるトンネルを作ることはできる。でも深層は、ものすごく危険なんだ。僕の魔法でも、あの暗闇を照らせるかどうか……正直、自信がない。
さやらんがどうやって、あんな場所までたどり着いたのか……僕にも、まったく想像がつかないんだ。」
からす「さやらんはいつも、モニター越しかホログラム(魔法の光でできた立体画像)で現れるらしい。
さやらんの生身の体を見たことがある生き物はいないとされている……それはつまり、さやらんは「深層に身を隠している、宇宙を超えた遠距離魔法の使い手」だということだ。
金魚八の情報管理は、すべてさやらんがひとりで行っていた。だから、セカイ中の魔法を知っていてもおかしくないだろう。絶望の破片を使わなくても、宇宙を滅ぼす方法を知っていても、全然不思議じゃない。
それだけじゃない……さやらんの素性について、誰も知らないということが、特に恐ろしいと思うんだ。長年、金魚八の幹部だったのに、どんな魔法を使うのか、どんな人物なのか、過去があるのか……ピンとこないのは、さやらんが金魚八の情報、つまり組織員の記憶をコントロールしていたからだと思うんだ。
記憶を盗み見たり、記憶や人格を操る魔法が存在することは、わたしたちも知っている。さくまちゃんは記憶を読み取る力を持っているし、イフクーンが絶望の破片でふうが君の記憶を操作したこともあるし。
そんな魔法がもし、遠距離から飛んできたとしたら……わたしたちは、いちばん大切なものも、ここに星が、宇宙があったことさえも……何もかも、忘れてしまうかもしれない。
……そんなの、悲しすぎる。
深海の力を扱うには、高い魔力や技術が必要とされるが、 何よりも大切なのは、愛情なんだ。強くて強くて、あたたかい愛と勇気と優しさが、奇跡を呼び覚ます。それが、この力なんだ。
たとえ魔法が使えなくても、使い方がわからなくても、今はまだ必要ないと感じていたとしても。それでも、この力を受け取ってほしい。
いちばん大切なものを失わないために。
金魚八のみんなも、レッドデビル☆カンパニーのみんなも、かえる君たちも、さやらんに立ち向かうのなら、全員受け取ってほしい。
この力は、きっと、わたしたちの心と体を守ってくれる。そう信じている。」
皆、息をのんだ。カチョロは故郷の宇宙や、失った思い出のことを想い、どこか寂しそうな表情を浮かべている。
イフクーン「記憶をコントロール……されている、だと?この、ワタクシが!?」
クロサキ「なんだか不安になって来たぜ。最悪の場合金魚八のことは忘れてもいいけど、マシロのことは忘れたくねぇ。」
イカパチ「念のためにもね!受け取っておこうよ☆」
みんなうなずいた。
さくら「みんなもそれでいいよな?よし、決まりだ、からす!」
からす「受け取ってくれ……これが、深海の力!!」
からすのサファイアブルーの瞳が、水面のように、星のようにきらめいた。
その光はやがて、からすの全身を包みこみ、水の波紋のように広がって仲間たちをも包み込んだ。
はじける輝きが視界を青く染める。
からすの手のひらに、静かに、深海のタクトが降りてきた。迷いなく、ぎゅっと握りしめる。そして、軽やかに、優雅にそのタクトを振り始めた。
すると仲間たちの目の前にも、それぞれの深海のタクトが、ひとつずつ舞い降りてきた。
仲間たちは勇気を胸に、そのタクトをしっかりとつかみ取った。
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
さくら「からす、確かに受け取ったぜ!からすは俺が守る、悲しい想いなんてさせねぇから!」
ささめき「宇宙も、この星も、歩んできた人生も……私たちのもの!私、兄さんたちともう一度話してみたい。」
さくま「散ってしまった星の記憶は、故郷は、我が未来に連れて行く‥…そんな覚悟だ。」
むむ「あたしがあたしじゃなくなったら、もう二度と届かない……あたし、あきらめないよ!」
さくらのタクトはサファイアブルーのピアスに変化し、耳に宿った。ささめきのタクトはガーターベルトに。さくまのタクトは天使の輪、むむのタクトはチョーカーに変化し、それぞれ宿った。
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
イカパチ「お兄ちゃんとクロサキ君、そしてレッドデビル☆カンパニー……ああもう、守りたいものが多すぎて困っちゃうよね☆」
クロサキ「これが、深海の力……最強だな!?」
イカパチとクロサキはお揃いの指輪にして、それぞれの人差し指にはめた。
タコダイオウ「タコタコタコ星もレッドデビル☆カンパニーも、永久不滅ですよね♪僕もお仕事、がんばります!」
タコダイオウはネクタイピンに変えて、装着した。
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「強くて優しい、魔法戦士!これからも回復魔法、がんばろうね。僕はステッキにする♪キャー♪サファイアブルー、キラキラで可愛い☆」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「フィカキスどうしよう。オレ、何のアイテムにしたらいいと思う?メガネはすぐ壊れるからいやや。」
フィカキス「メガネのチェーンにしたらいいんとちゃう?オシャレやん♪オレはベルトにして、タコ足に付けよっと♪」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「それ、ええなぁ♪メガネ落とせへんし。そうしよ!」
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
ことお「俺は魔法コンピューターにする!」
とおこ「あたくしは……扇子にしようかしら♪」
ことおは深海のタクトを魔法コンピューターに変えた。魔法で小型化し、髪留めの中にしまった。
オキ「くまにあげるよ。耳のパーツにする?サファイアブルーの耳、似合うと思う。」
くま(オキのパーツじゃなくて、僕のパーツにするの!?)
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
カチョロは深海の力を、ほめとから借りている四つ葉のクローバーのブローチに、宿らせた。
。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆・゜・ 。・゜☆。・゜
ユニタス「これが……深海の力……!
なんて…なんて、なんて重たいんだ。
まるでセカイそのものを背負っているみたいだ……。」
ユニタスは、深海のタクトを右手でぎゅっと握りしめると‥‥
そっと背中に隠した。
そして、何気ない動きで、数歩……後ろへと下がった。
その目に映るのは、決意の光を宿した仲間たち。
励まし合い、信じ合い、気持ちをひとつにして高め合っている、優しく、美しい光景。
一歩、また一歩と距離をとっていく。
一メートル、二メートル……じわじわと、離れていく。
からすの優しい笑顔、横顔。
声、背中……それらが、少しずつ、少しずつ遠ざかっていく。
ユニタス「……この瞬間を、ずっと待っていた」
ユニタスは、にやりと笑った。
右手に握られていたのは深海のタクト……いや、
サファイアブルーの拳銃。
静かに、ためらいもなく、それを「さくら」に向ける。
引き金が、引かれた。
バンッ!!!
からすの頬を、赤い血しぶきがかすめ飛んだ。
破裂音。生ぬるい感触。
それが、からすの笑顔を一瞬で奪い去った。
空気が凍りつく。
呼吸することさえ忘れ、立ち尽くす。
何が起きたのか。考えるより先に、視線が地面へと落ちていく。
信じがたい光景だった。
頭を撃ち抜かれた、最愛の人。光を失った瞳で、虚ろ虚ろと、ただ朝焼けを見上げている。
直後、モニターが乱れ、ビデオ通話は途切れた。
なにが
なにが起きたんだ?
なにが、なにが……。なにが、なにが……。なにが、なにが……。
バンッ!!!
次の瞬間、焼けつくように苦しくなった。
思考が追いつくより早く、視界が一回転し、全身に衝撃が走る。土の味がした。
眩しい。
眩しい?
眩しい。
眩しい。
ああ、そうだ。
この輝きは……
星のはなびら。