【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】16話 もうすぐ最終回!

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……タコタコタコ星は、星ごと大爆発してしまった。

圧縮されたタコタコタコ星の星の力と魔力が解き放たれ、タコタコタコ星は自らの力に耐え切れず、星のはなびらになった。

魔法の爆風は、近くの無関係の星々を巻き込み、燃え広がった。タコタコタコ星の星のはなびらは、鋭い針のように変形し、広範囲へ吹き飛び、突き刺さった星々を散らしていく。

閃光は青色の星から肉眼で確認できるほど大きかった。揺れ広がる空間の歪みが、見ている者の皮膚をピリピリと走り抜けて……。

崩壊は連鎖していく。破滅は、確実に近付いてきている。

雲が渦巻く、禍々しく。そして、何もなかったかのように消えていく。眩しさに満ちた空は、真っ白に変化した。強い闇が降り注ぎ、地面や地上にあるものは、真っ黒に変化した。

クロサキ「ま……マシロ……。……。」

遠い遠い星にいる最愛の人。希望は悲しみに押しつぶされ、空っぽの現実が胸の中に広がっていた。

クロサキ「…。」

信じられない、信じたくない。腰が抜けて、崩れるようにへたり込んだ。

金魚八の組織員たちは、深海の宇宙が消滅することを確信し、時空のトンネルへと避難し、ひとり、またひとりといなくなっていく。イフクーンは彼らを引き止めることなく、クロサキの悲しい背中を何も言わずに見つめていた。

イフクーン「クロサキ……。」

カチョロは我を忘れて駆け出した。

カチョロ「ほめと君…ほめと君!!ほめと君!!ほめと君!!

頭の中は、ほめとたちのことでいっぱいだった。

宙へと飛び立とうと、地面を蹴った、その瞬間。

ドンッ!!強い力が、全身を下へと引っ張った。

身体が地面にたたきつけられ、息が詰まる。立ち上がらないと。そう思って、必死に身体を起こそうとしたその時…‥目の前に、靴が見えた。行く手を遮ったのは、さやらんだった。

‥‥‥宇宙の法則が崩壊していく。

あらゆる秩序が、音もなく壊れていく。

星の力を捻じ曲げて、星の脈動が暴走する。その影響は、星の化身たちの身体にあらわれた。星の化身の体は、何もせずともボロボロに朽ちていく。さやらんは平然としているが…。

ことお「この痛みは現実的じゃないって~!!」

とおこ「いたい……今この瞬間ほど、星の化身をやめてしまいたいと思ったことはありませんわ‥…。」

からす「ゲホッ、ゲホ…‥宇宙がしんでしまう。さ、さくら君、どうか、しなないで。

希望を失わないで……後は頼んだから。」

さくら「か、からす……!!」

オキ「僕も、くまも、さくらも……まだ、諦めてない。大丈夫。」

絶望的な状況の中、さくまはさくらたちの思考を読み取り、全員の考えを確認した後、決意して、ささめきとむむの腕をつかんだ。

さくま「ささめき、むむ、これは我らが対抗できる現象ではない……!!タコタコタコ星から、少しでも離れるんだ。我と、宇宙に飛び立つぞ!!」

ささめき「いやよ、からすさんたちを置いていくなんてできないわ!!」

さくま「わがまま言うな!こんなところで命尽きてどうする。からすとさくら達を信じろ。ここは危険すぎる、我らは足手まといだ……それでも、生き残る方法を諦めずに求め続けるんだ。それこそが、青色の「不死」の星の守り人らしい行動だと思わないか!!」

ささめき「……わかった。わかったわよ。……生き残って見せるわよ。」

むむ「さくら君!あ、あたしたち、逃げるからね!」

さくら「ささめき、さくま、むむ!俺たちの星が飲み込まれる前に、早く行くんだ!絶対生きろ……俺も、からすも、しなねぇから。

しなせねぇから。

……まだ、俺とオキと、クロサキとイフクーンとカチョロはまだ動ける。

だから、俺たちがなんとかする。

タコタコタコ星も、深海の宇宙も、

全部、なんとかしてみせる!!!!!

だから信じてくれ!!!

ことお「むむちゃん……、とおこも連れて行ってほしい!!

とおこは一度、緑の星の外に出ているし、深海の力もある。連れ出せるはずだ。とおこ、星の化身の力を全部、俺に送れ!星の力を手放せば、痛みが和らぐはずだから。」

とおこ「でもそれって、代わりに、お兄様の痛みが増してしまうんじゃなくて……?」

ことお「俺のことはいいから、俺のために逃げてくれ!頼むよ……。」

とおこは、ことおの手をそっと握った。静かに星の力と、未来予知の力を送り込んでいく。

とおこ「……お兄様。ありがとう。どうかご無事で。」

苦しむ姿を見るのが辛くて、オキは思わず目をそらした。こんなことになるなんて、想像も、覚悟も、できていなかった。

オキ「ことお君、僕、負けないから……。絶対、絶対、助けるからね。」

ことお「……。」

さくまは深海の力で宇宙船を創造した。ささめきは悲痛な表情をしながら、くるりと振り返り、「あんたたちも……早く来なさいよ」と言って、名残惜しそうに乗り込んだ。どこからかやってきたかえるたちも順番に乗り込んでいく。

むむ「とおこちゃんもいくよ!大丈夫、あたしが守る。とおこちゃんも、とおこちゃんの未来も。」

むむはとおこをお姫様だっこし、宇宙船に乗り込んだ。

宇宙船は光のような速さで急発進し、空の彼方へと消えて行った。

……立ち上がったカチョロは、さやらんを鋭い視線で見つめた。さやらんは距離をとってから、片手剣の切先をカチョロに向けた。

カチョロ「……行かせてくれないの? 立ちふさがるってこと?

お願い……ひどいこと、しないで……。

……僕の行き先も、焦っている理由も、わかってるくせに。」

さやらん「もちろん。でも君も、僕を足止めをしたいんでしょ?」

さやらんはもう片方の手に光を集め始めた。その光は真っ白な片手剣へと姿を変えた。

それをカチョロの足元へ投げた。

ヒュッと風を切り、剣は地面に突き刺さった。

さやらん「君が何もしないなら、ほめとも、深海の宇宙も、思い出も……全部、散ってしまうだけさ。」

カチョロ「……。」

カチョロはゆっくりと前に踏み出した。

そして迷いのない手で、剣の柄に手を伸ばした。

カチョロはその剣を、力強く抜き取った。

カチョロの神聖な魔法が、白色の剣に伝わっていく。

剣は大空のように、太陽のように、静かに、凛と、輝いた。

剣の持ち手に緑が芽生え、優しい花が咲いた。

ただの魔法の輝きではない。

それは、カチョロ自身の命や想い、すべてを込めた輝きだった。

生命力そのものが、今、この剣に宿っている。

さやらんはにやりと笑った。やる気満々の様子で腕まくりし、背負っていた「真・K-時空逆転マシーン」を投げ捨てて、眼光をゆらめかせた。

さやらん「本気、出していいよ♪」

その瞬間、カチョロに狙いを定めていた暗黒溶が、一斉に撃ち放たれた。空間を切り裂く無数のレーザー光線が、カチョロの体を打ち抜こうとする。

しかしカチョロが剣を一振りすると……その全ての攻撃が光の粒となって、空間に溶けて消えた。レーザーだけでなく、暗黒溶、武器そのものも、光の粒となって、空間に溶けて消えていた。

カチョロ「もう、なにも失いたくないから‥…守ってみせるよ。」

からすとことおはとっくに意識を失っている。……さくらとオキは、決意を固めて、抜け殻のようになっているクロサキのもとへと駆けつけた。

さくら「しっかりしろ、クロサキ!あとはカチョロにまかせて、お前も来い!!!」

クロサキは顔をあげた。泣きすぎて目元は真っ赤にはれている。

クロサキ「来いってどこに行くつもりだ……?もうマシロも、タコタコタコ星もないんだ。こんな状況、何をどうするって言うんだよ!!!」

イフクーン「そうですよ。今更何を、どうするというのですか!?」

オキとくまも、「なにか作戦思いついてるの?」と、さくらを見つめた。

さくら「えーっと!!……そ、そうだ!今思いついた。

作戦を発表する!!

ことおが作った真・K-時空逆転マシーンを使って、時空のトンネルに行く!宇宙の深層に行って、さやらんを捕まえる!深海の力があるから、マシーンは動くはず!多分!

それから、ブレイブ☆タコキスを探す!あいつらテレパシー得意なのに連絡がないだろ?多分さやらんに捕まってるんだ。……さやらんを捕まえたときに、居場所を聞いて、助け出せばいい!

大ピンチの状況なのに来ないってことは、ゆずは先輩たちもさやらんに襲われたり、邪魔されてるんだと思う。でも、ゆずは先輩は強いし多分しなないから、手を貸してくれるはず!

ブレイブ☆タコキスの、深海の力、本気のタコキスヒール☆ギャラクシーで、深海の宇宙ごと回復させて、全部元通り!!

イカパチもタコダイオウも全員復活!まだ宇宙は、散り切ってねぇし!!」

クロサキ「作戦が適当すぎる…。」

さくら「さやらんは、カチョロが足止めしてくれる。からすとことおは、しんだりしない。だから、深海の宇宙はカチョロにまかせて……俺たちはさやらんに見つかる前に、時空のトンネルに飛びこもう。

とりあえず全員で、時空のトンネルの深層にたどり着こうぜ!!

イフクーンはさやらんにそっと近づき、こっそりと、投げ捨てられた真・K-時空逆転マシーンを拾って背負った。意外と……やる気がある様子だ。戻ってきて、クロサキの右腕を掴んだ。さくらはクロサキの左腕を掴み、もう片方の手はオキと繋いだ。くまはオキにしがみついている。これで、時空のトンネルで離れ離れにならないはずだ。

さくらが真・K-時空逆転マシーンの、時空のトンネルにワープする機能が搭載された「絶対おすな」ボタンに手をかけつつ……、クロサキの顔色を伺った。

クロサキ「わかった!わかったから!!よくわかんねぇけど、俺も行く、行けばいいんだろ!!

ああもう、……どうしてお前ら、絶望しねぇんだよ。強すぎて、ちょっと引いてるぜ?」

さくら「お、俺もわかんねぇけど……今俺が絶望したら、全員負けちまうだろ!!

さくらは一粒の涙を袖で拭ってから……意を決して、ボタンを押した。

さくら、オキ(と、くま)、クロサキ、イフクーンは、深海の宇宙から姿を消した。

さぁ……

再び……時空のトンネルへ!!!

続く

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